津野海太郎★読書と日本人 ※――あかし市民図書館、大丈夫か?

20170528

2017.05.28読書と日本人


「聖域なき構造改革」の旗のもとで、経営難になやむ各地の自治体がいっせいに図書館「改革」にはげみはじめた。〔…〕

 図書館のような公共事業にはとことん冷たい。その冷たさが自治体の役人や政治家、はては住民(利用者)の多くにまで共有され、図書館の内外で、いつしか「図書館に企業の経営手法を積極的にとりいれよう。それは文句なしにいいことなのだ」という判断が力をもつようになった。

 そんな空気のなかで、図書館予算を大幅切りつめ、専任の図書館員を派遣や契約社員におきかえ、ついには、われわれの社会に図書館があることの意味など本気で考えたこともないような外部企業に運営を丸投げしてしまう――

そんな無茶なことまでも平気でやってのけるようになってしまったのです。

 そしてこれらの「改革」の一環として、近年、図書館が新たに購入する本に占める〈やわらかい本〉の割合が激増し、その一方で〈かたい本〉のかずがますます減らされている。


★読書と日本人|津野海太郎|岩波新書|2016年10月|ISBN:9784004316268|

 本書は読書という行為の「源氏物語」時代から現在までの変化、さらに未来はどうなっていくのかを語った読書論だ。だが当方がいちばん気になったのは、「活字ばなれ」の現在について、著者の住む東京近郊の某市立図書館についての記述の部分である。

 ――読むのに多少の気力を要する部厚い翻訳本や研究書などはゼロ同然。岩波書店もみすず書房も白水社も藤原書店もなければ、講談社や中央公論新社や筑摩書房の叢書や双書類もない。
 おことわりしておくと、もともとここは全国でも有数のすぐれた図書館だったのです。それがちょっと見ない間に、いやはや、ここまですさまじい事態になっていたとは……。
(本書)

 以下、図書館の未来予測に続くのだが、それはともかく指定管理者を導入する図書館が急激に増え、窓口応対はていねいだが、レファレンスはやらない図書館が増加、と危惧したとおりになっていきつつある。

 ところで図書館といえば、宮田昇『図書館に通う――当世「公立無料貸本屋」事情』(2013)という示唆に富む好著があった。
 他方、川本三郎『そして、人生はつづく』(2013)には、図書館への“癇癪文”が掲載されていた。「××図書館に対して怒っている。温厚な私が?!」と。著者の些細なミスについての図書館の処置が厳しすぎると、怒っている。図書館と館長、苦情の手紙を出した区長、すべて実名である。数度にわたるエッセイでその図書館を嫌味たらしく非難している。『マイ・バック・ページ――ある60年代の物語』の著者は、1944年生まれ。癇癪持ちの老人の一面を見せるようになってしまった。

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なぜこんな話を持ち出したかといえば、“公憤”“私憤”さまざまだが、以下の記述は、川本本とは混同しないでいただきたいからである。

 当方は、神戸市から姫路市まで(高砂市を除く)の4市2町の図書館を利用したことがある。そのなかで「本の探し難さ」でだんとつ1位という致命傷をもつのが明石市立図書館である。非難が目的ではないために書いておくが、返却場所が多数あることで「便利さ」でも1位である。

 この図書館が「あかし市民図書館」と名を改め、2017年に駅前再開発のビル4階に設置された。TRC(図書館流通センター)が指定管理者として運営する。
 蔵書2倍、床面積4倍になったという。駅に至近距離のためか、勉強する若者や窓際で駅前風景を眺める若者が目立つ。周辺の図書館が老人憩いの場となっているのと大違いで、若者を取り戻したことで大成功といえる。だが目当ての本が探せないのである。

 運営するTRC(図書館流通センター)は、設立時はともかく現在は大日本印刷傘下の純然たる株式会社である。公共図書館の裏方であったが、苦節ン十年、指定管理者制度の発足とともに一躍表舞台に出た。取次店でもあるので、指定管理者のコンペがあっても経費面で断然優位に立つので、地域のNPOが地域に密着した図書館を提案しても、太刀打ちできない。

 明石市に隣接する播磨町でもTRCが指定管理者となっているが、当初、「新刊本を(書店に行かなくても)当図書館で取り寄せて購入できます」とPRしたので、「地域の書店を廃業させるつもりか」と苦情を言ったことがある。また、30年ほど前に刊行された作家の個人全集60巻余りが突如購入、配架されたことがある(理由は推測できるが、推測なので書かない)。TRCとはそういう会社である。
 
さて、大いに期待して明石市立図書館へ、ネットのOPACで事前に調べたうえ、「状態=貸出中」でない以下の3冊を借りに出かけた。

① 高島俊男『お言葉ですが…… 別巻7 本はおもしろければよい』
 このシリーズは18冊でているが、「文学」という表示の棚が約20あり、うち「エッセイ」の棚にたどりついたが、このシリーズは背ラベル「Eタ」という表示で無作為に(本巻1~11、別巻1~の順でなく)十数冊並べられていた。が、別巻7はない。念のため館内OPACで調べると、背ラベル「E タカ 18」とある。1メートルほど横にぽつんとこの1冊があった。

② 小玉武『「係長」山口瞳の処世術』
 「背ラベルのカタカナ表示はすべて著者の頭文字です」とこの館の社員は平気で嘘をつく。本書は、背ラベル「910.2」とある。著者は小玉だから「910.2 コ」を見たが、ない。以前読んだ小玉武の『佐治敬三 』は「Bサ」。この図書館は以前はNDC分類の「伝記」を「B」(Biographyのことか)と表示していた。同『開高健』は「910.2 カイ」。ようやく見つけた『「係長」山口瞳の処世術』は「910.2」の上に「や」という字のラベルが張ってあった。

③ 荒木一郎『まわり舞台の上で 荒木一郎』は背ラベル「289.1 アラ」とある。「個人伝記」の分類である。これが見つからない。10分ほどでギブアップし、窓口の社員に探してほしいと頼んだ。念のため時間を計ってみた。社員2人で探してくれたそうで、実に17分が経過したいた。背ラベルが分かっていながら、これだけ時間がかかるのは、配架に欠陥があるのは明らかである。

 さて、同ビル2階にはTRCと同じ大日本印刷の傘下にあるジュンク堂書店もオープンし、合わせると100万冊以上の本が集まる“日本一の本のビル”と(なぜ合算するのか意味不明だが)、明石市は豪語し、市長は(これも意味不明だが)「本のまち明石」をめざすという。

 その市長は自宅の壁はすべて本棚という。それほど本好きなら、この図書館でご自分の著書を何分で見つけることができるか、試してみてはいかがか。1人で同時に20冊まで貸し出すというサービス(どうやって持って帰るのか?)を自慢する前に、配架の表示と配架順を周辺地域の図書館並みに分かりやすくしたらどうか。

 TRC社員は、苦情を言うとその場限りの返答でクレーマー扱いする以前に、サービスは細部に宿る、ディテールこそ図書館司書の使命であることを知ってほしい。

 当方は、書棚番号優先の館内表示、旧館からの引継ぎ本の背ラベルと配架順の改善、館内案内チラシの改善について案を持つが、書かない。それを自ら考え、実行するのが、TRCの矜持だろう。

 
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1冊の本の中から気になるフレーズを紹介する。2004年から開始し、2015年1月からツイッター版も。全索引あり。

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