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気になるフレーズ――この本、この1行

category: 15/ミステリアスにつき  1/6

松尾公也・松本健太郎◎キーワードで読み解く人工知能――『AIの遺電子』から見える未来の世界    …………☆本書を先に読むか、漫画を先に読むか

 そもそも記憶とは思い出した内容だと言われており、起きた現象をそのまま覚えているのではない。したがって、自分の都合のよいように思い出すこともよくある。人間は実に自分に都合のよいようにできているとも言える。 では、人工知能はどうだろう。コンピュータは人間よりよっぽど正確だ。故障でもしない限り、忘れることはない。〔…〕 しかし、脳とコンピュータの記憶の仕組みには、いくつかの違いがある。 1つ目はコンピュ...

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吉田篤弘◎チョコレート・ガール探偵譚   …………☆幻の映画の謎を追って電網を使わず(でもときどき使って)探索した「作り話のような本当の話」

 いまや、机に向かってパソコンを操作すれば、たいていの探しものは見つかってしまう。見つけてしまったらそれまでで、探しているあいだに起こりうる「考え」や「彷徨」といったものがインターネットの検索によって一瞬で消えてしまう。そもそも文章を書くことの極意のひとつは、いかに知らぬふりを継続できるかである。とりわけ、探偵が謎を解くような話を書くときは、いかに謎の核心となる物や人や事をそれとなく迂回し、結末や...

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発掘本・再会本100選★鴨川食堂はんなり |柏井壽    …………☆読者は、おまかせ料理にごくりと喉を鳴らし、人生の岐路で直面した“食”の話に切ない思いをする

「うちから歩いて行けるとこに、あんなおいしいおうどん屋さんがあるて、ぜんぜん知りませんでした」 こいしが紗香の後ろから言葉をはさんだ。「今、おうどん屋さんっておっしゃいました?」〔…〕「京都ではたいていうどん屋て言うんですわ。麺類全般、うどんから蕎麦、中華そばまで、丼もんも出す店は、食堂と名が付いとっても、京都の人はうどん屋て言います。うちもそうでっせ。近所の人に言わせたらうどん屋ですわ」〔…〕「わ...

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橋爪大三郎:編著:◎小室直樹の世界――社会科学の復興をめざして …………☆「情報」を「知識」に、そして「知識」の結合が未来を切り開く

 小室博士は本を読んだが、本に何が書いてあるかを知ろうとして本を読んだのではない。本に書いてあることのうち大事なことをすべて頭の中に入れるつもりで、本を読んだのである。 本に書いてあるが、頭の中に入っていないものを情報というならば、本に書いてあり、しかも頭に中にもう入ってしまったものを、知識とよべると思う。 知識は、生命をえて、自分で歩き始める。ひとりの人間の頭の中に、知識Aと知識Bと知識Cが入り込...

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北野勇作◆その先には何が!? じわじわ気になる(ほぼ) 100字の小説 …………☆“ツイッター文学”130篇で“不安”を楽しもう

 この本には、すごく短い小説が130話入っています。 読んでみると、なんだかもやもやしたり、すっきりしないと感じたりするかも。 きちんとした解決や結末はありません。どういうことだったのか。このあとどうなるのか。読んだだけではわかりません。でも、小説はクイズでも試験問題でもないので、正解は必要ないんです。 正解があると人間は安心しますよね。逆に正解がないと言われると、落ち着かない。なんとなく不安になり...

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嵐山光三郎 磯田道史◆影の日本史にせまる――西行から芭蕉へ  …………☆元秘密警察・西行、諜報・宣伝の連歌師・宗祇、隠密・芭蕉、その“文学史の裏面”談義

    正攻法の歴史学は、古文書などの一次史料で丹念に史実を調べる。しかし、このまともな方法の歴史学だけでは、日本史は読み解けない。 われわれが、和歌や連歌や俳諧のことを学校で習うとき、それは純粋な文学として教えられる。西行や宗祇や芭蕉は、聖人のような美しい芸術家としてイメージされやすい。しかし、現実はそうではない。彼らには、権力の影に生きていた顔がある。 たとえば、西行は、北面の武士の出身であり...

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原 尞◆それまでの明日    …………☆私立探偵沢崎、14年ぶりに登場。傑作とはいえないが、沢崎がなつかしい、それだけでいい

 西新宿のはずれのうらぶれた通りにある〈渡辺探偵事務所〉を訪ねてくるのは、依頼人だけではなかった。 古びたドアをノックしさえすれば、記憶を失くした射撃選手も、性転換したゴースト・ライターも、探偵志願の不良少年もおかまいなしに入ってくることができた。一億円を奪われた暴力団員も、私を殺したい悪徳警官も現われた。もっとも、最後の警官だけは私の留守中に押し入っていたので、ドアをノックしたかどうかは不明であ...

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発掘本・再会本100選◆殺人者はいかに誕生したか|長谷川博一…………☆重きを置いたのは、彼らがまだ犯罪者ではなかった「子ども」のときのことです。……宅間守という“凶獣”

 妻は、遺体を引き取るときの状況も話してくれました。普通は拘置所内で火葬され、お骨のみ受け取ります。しかし妻は、遺体を引き取ることを強く要望したのでした。 拘置所の裏門で、棺が載せられた車に乗ろうとする際、拘置所の若い職員が駆け寄ってきて、囁き、すぐに帰っていったそうです。 〔…〕 彼、宅間守の最後の言葉を伝えるためでした。それは、「○○さん(妻) に、ありがとうって伝えてほしいねん」 そこには、モンスタ...

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清武英利★石つぶて――警視庁二課刑事の残したもの …………☆ノンキャリアという石つぶてが放つ哀感にじむノンフィクション

 生きて償ってもらうと中才が言うように、古手の刑事になると、独特の哲学を持つようになる。鈴木も「償い」について、中才に似た思想を持っていた。 ――松尾が上申書にあるような罪を犯しているのならば、同情の余地はない。しかし、それは償える。生まれつきの犯罪者はいない。環境が人間を変えていくのだ。 不正を許す環境に身を任せたときに、人間が犯してしまった部分が犯罪であって、その部分だけは責任を取ってもらわなけ...

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畑中章宏 ★21世紀の民俗学 …………☆太鼓も唄もない「無音盆踊り」は霊とのひそかな交わり

 世界に満ち溢れる音のなかには、美しくて意味があるものと、清掃すべき不快で無意味なものがある――。「無音盆踊り」を眺めながらわたしは、美音と雑音・騒音の線引きの基準について考えていたのである。 肝心の踊りのほうはなかなかの「見物(みもの)」だった。 砂をこする草履の音、時間差で打たれる手拍子。お囃子が響かないことで、所作が露わになり、踊るからだが生み出す音だけが聞こえるのだ。 惜しむらくは、「無音盆...

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