岸川真★亀井静香、天下御免!…………☆慰安婦像は、お地蔵さんのようにどんどん建てればいい。

20170802

2017.08.02亀井静香、天下御免


 終わりと始まりはいついかなる時も来る。

 ダメだという時に浮き上がりもすれば、イイ時に沈む日もある。これに右往左往していたんじゃ駄目なんだというね。死の宣告を逃れた後に、警察の上級の発表があるわけ。行ってみると、7番で合格だった。

 だから人生は振り返っちゃいかんのですよ。

愚かしいことをやったり、苦労をしても振り返ったら、かえってソレに足を取られて苦労するんじゃないかな。


 むしろ、いつも前だけを向いて進んでいけば、人生の岐路、難所なんか何ということもないのではないかな。


★亀井静香、天下御免!|岸川真|2017年6月|河出書房新社|ISBN: 9784309248028|○

 亀井静香(1936~)は、最高齢の衆議院議員、建設大臣など歴任。いかつい顔だが、どこか愛嬌があり、ブレのない言動に右から左まで多くのファンがいる。その波乱万丈の人生を語ったもの。

 広島県比婆郡山内北村(現・庄原市)という山間の貧村で育った子どものころから東大経済学部卒業までの前半は、青春小説を読むように痛快無比。

 就職活動は「生意気とこの顔は変えられない」で、つぎつぎ失敗し、先輩に当たる人に誘われ別府化学工業大阪本社(現・住友精化)に入社(この工場が当方の住む町にあり、多少の縁がある)。しかし60年安保騒動を間近に経験し、警察を立て直そうと一念発起、1962年警察庁に入る。

率直に語る亀井だが、具体的に話さない2か所がある。
 その一つは、警察庁警備局情報担当キャップの5年間。斃れる部下、「人格が破壊されて辞めていく」部下がいた過激派組織対策のとき。
 もう一つは、細川護熙首相時代、夜陰に紛れて殿さまの首を取る話。細川がわずか9か月で首相の座を下りたのは、佐川急便ヤミ献金や国民福祉税構想ではなく、亀井がつかんだ“抜き差しならぬ”倒閣情報のためだという。具体的に記述していないが、汚職という犯罪は、誰にでも当て嵌めることができる、「捜査して初めて明るみにでる犯罪」だと書いている。

 政治家としてもっとも活躍したのは、その後の自社さ連立政権構築に奔走したこと、そして村山富市首相を支え運輸大臣として阪神淡路大震災復旧復興など。
 
 小泉純一郎政権では、なんども政策協定違反で煮え湯を飲まされるが、“純ちゃん”は抗議しても女の話ばかりしてはぐらかしばかりだったと。小泉“改革”の嘘を徹底的に批判している。その“純ちゃん”に郵政民営化選挙で広島6区にホリエモン堀江貴文を刺客に送り込まれる。

自民党、国民新党、無所属と1979年以来連続当選で衆議院議員を続ける。政治家は安定した選挙区をもてば、安心して自由に政治活動ができる。

――俺の場合は党じゃないんですよ、党は関係ない。零細や草の根の血盟団みたいな感じになっているから、その後も政治活動を自由にやれたんです。党が怖いわけでもないから党を出たって関係ない。国民新党を辞めて無所属になっても変わらないんだ。良い人に巡り合って、それがずっと続いていってる。

 ――故郷の須川で隣に住んでいた、大迫さんの封書です(財布から古い封筒を取り出す)。94歳の時に私へこの封筒へ10万円を入れて下さった。政治に使ってくれと。ここに「谷間の美田は草原に/時の流れの悲しけり/美しい国とは昔の言葉/国の未来が思いやられる」そう書かれています。大迫さんは大金を託してくれた。これは私の心に突きさきったままです。
(本書)

 当方がもっとも賛同するのは慰安婦問題での亀井の考え方だ。

 ――慰安婦像について日本国内で大きな反発はあるけど、私はそうしたひどい目に遭ったと思っている人が、そうしたいと仰るんなら好きなようにおやりになったら良いと考えます。
 日本で道々に地蔵さんがあるでしょう。あれと同じように気が休まれるなら地蔵さんを建てるように、どんどんお建てになったらいい思うんです。国辱ではないかと言う輩もいるでしょうが、被害を受けた方はいつまでも覚えているものだ。占領された、植民地支配を受けたほうが忘れません。
(本書)

 当方は、慰安婦像は好きなだけ設置すればいいと思っている。それが地蔵像のように地域で親しまれ続けるか、二宮金次郎像のようにいずれ時代に合わず撤去されるか、韓国民に委ねればいい。ゴールポストをどこまで動かすのか、韓国民の心情は推し量れないが。

 ――主義でもないけど、見栄も張らない、恩も売らない、媚もしない。三ないだ。加えて可愛げもない議員だったんです(笑)。(本書)

「彼の人生から信念の在り処を窺い知れれば、先の読めない時代に生きる我々の,〈ひとつの処方箋〉に
なりうるのではないだろうか」と著者岸川真はいう。

 ――だからこうやってね、栄耀栄華で暮らしていて、エラそうにあなたに話していてさ。後ろめたさなんてねえと断言しなから、俺は偽善者だなと思うわけだよ。〔…〕ふーん何を言っているんだアイツは。そういう眼が、俺をじっと睨んでいるじゃないかと感じられてならないんだ。(本書)

 亀井静香。含羞の人である。
 

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成毛眞★この自伝・評伝がすごい!  …………☆山口敬之『総理』や安倍を褒めようとしたが、できなかった(著者)

20170717

2017.07.17この自伝・評伝がすごい


安倍の返答を記している。

「総理大臣になることや総理大臣であり続けることが重要なのではなく、総理大臣になって何をするかが重要なんです」。

 ここで著者が強調したいのは「何をするかが」という部分だが、注意すべきは「総理大臣になって」の部分だ。つまり総理になってやらないと意味がないということである。

よって、安倍が「総理大臣になることや総理大臣であり続けることが重要なのではなく」の部分は嘘で、あくまで総理であることが重要なのだ。何故か、総理大臣の専権事項がたくさんあるからだ。

安倍以外、興味がない憲法改正など、総理でなければできるはずもないのである。

憲法改正が現実味を帯びるのは「いちばんやりたい安倍が総理大臣だから」なのだ。


――幸運力・安倍晋三(山口敬之『総理』)


★この自伝・評伝がすごい! |成毛眞|KADOKAWA|2017年4月|ISBN: 9784046019257|△

 HONZという書評サイトがあり、著者はその代表者。ブロガーと思われるメンバーがノンフィクションを書評する。以前、『紙つなげ!』という企業PR本を大々的にほめていたり、「今週のいただきもの」という出版社から送られてきた本を紹介したり、恣意的な書評サイトだと思っていた。したがって著者の本を手にするのは、初めて。だが、一味違っていた。

 パラパラとページを繰っていたら、山口敬之『総理』を扱っていた。準強姦罪容疑で逮捕状まで出ていたあの山口敏之の事件発覚前の著書である。いったん書棚に戻そうとしたが、どう安倍の“評伝がすごい!”と褒めているのか知りたくて、本書を手に取った。

 ――この推薦本(山口敬之『総理』)は、冷静さを欠くほどの安倍礼賛本である。著者は、安倍との出会いについて「当初からウマが合った」とし、2000年以来の関係を「時には政策を議論し、時には政局を語り合い、時には山に登ったり、ゴルフに興じたりしたと書いている。

 挙句の果てに出てくるのが「栄光と挫折を足掛け1 6年にわたって至近距離で見てきた」という一節だ。もちろん、時の宰相を描くときに自身が何ものであるかということをつまびらかにすることは重要である。ただ、シビリアン・コントロールを任せられている国民が、総理を捕まえて「栄光」とは、いかにもまずいのではないか。
(本書)

 そして著者成毛眞は、「批判的に読むのにちょうどいい、という理由で選定した」と書く。「また何とか、安倍晋三を、そして推薦本を褒めようとしたが、できなかった。申し訳なく思う次第である」とも。

 本書は一筋縄ではいかない本である。無謀力・小倉昌男、金策力・山中伸弥、貴族力・チャーチル、インパクト力・徳川綱吉など17人の自伝・評伝を取り上げている。自伝・評伝をダシに、○○力という表現が示すように、いわば逆張りの人物評を著者はやってのけた。タモリは絶望力であり、岡崎慎司はネガティブ力 であり、ニクソンは平和力なのだ。

 たとえばニクソンは(単独の自伝・評伝でなく、明石和康『大統領でたどるアメリカの歴史』をテキストにしている)、ウォーターゲート事件やドル・ショックで批判されるが、ベトナム戦争終結、中国との国交正常化、ソ連との冷戦の緊張緩和、この3点で評価されるべきで、「アメリカの大統領の中で誰が一番か、と問われれば、それはニクソンになる」と。すなわち「平和力・ニクソン」である。

 それにしても、安倍晋三は何をしたいのか。当方には、最初に憲法改正をした男という肩書だけがほしくて、唱えているだけに見える。別に9条でなくてもいいのだ。その程度のたくらみであればいいのだが。

 その安倍官邸がだんだん汚らしくなってきた。この『総理』で安倍を絶賛した山口敬之が準強姦罪容疑で逮捕寸前だったのを、捜査打ち切りにしたのが中村格警視庁刑事部長であり、“菅官房長官の片腕”である。さらに山口敏之は“安倍首相の右腕”北村滋内閣情報官に事後対応について相談していたという。官邸がレイプ事件を隠蔽したのだ。

 “もり・かけ”疑惑では、安倍アキレ夫人が首相と同じ厚顔・姑息な単細胞の似たもの夫婦であることが判明した。また菅義偉“名長官”の化けの皮がはがされ、警察官僚を駆使し私生活を暴いたり個人攻撃する下卑た“隠蔽長官”であり、最近では会見の場でもリスペクトされず、「そのような指摘は当たらない」などスガ語には失笑が漏れるようになった。

 元文科事務次官の“出会い系バーへの出入り”は、杉田和博官房副長官から読売新聞にリークされたのではないかとの疑惑があるし、加計学園で暗躍している萩生田光一官房副長官は落選時に加計に養ってもらっていた。安倍擁護のネットの書き込みは、官房機密費から金がでているのではないかと疑ってしまうほど、官邸は汚れている。

 安倍官邸のオモテの政策も、「地方創生」まではよかったが、「ニッポン1億総活躍プラン」、最近では「みんなにチャンス!構想会議」で「人づくり革命」だと。安倍官邸は、国民を舐めきったようなキャッチフレーズを多用し、だんだん恥ずかしくみじめたらしくなってきた。

 本書は「幸運力・安倍晋三」だが、当方は「姑息力・安倍晋三」がふさわしいと思う。

原田國男★裁判の非情と人情   ☆「信頼したい」という気持ちにさせてくれる一書

20170609

2017.06.09裁判の非情と人情


 裁判官をしている40年近くの間、最も心掛けたことは、被告人の人権の保障でも適正な裁判の実現でもない。

それは、記録を紛失しないことである。


 記録あっての裁判であり、人権の保障も適正な裁判もその前提に立っている。

 これを聞いて、何と情けない、志のない裁判官かと嘆かれよう。〔…〕
しかし、修習生時代から耳たこで聞かされ、私ども裁判官は、なり立てのころから、このことには最大限の注意を払ってきた。〔…〕

 大型事件(脱税事件や経済事件等)では、その量は半端ではない。ロッカー何棹にもなる。万丁事件といって、話録が1万丁を超える事件も少なくはない。丁数でいうから、頁数では、その倍である。10万丁事件もやったことがある。これを全部読んで手控えをとって判決を書くのだから大変である。

――「10万丁事件――裁判は記録あってこそ」


★裁判の非情と人情 |原田國男 |岩波新書|2017年2月|ISBN: 9784004316466|〇

 当方は図書館にあっても手にすることのない岩波書店『世界』。そこに連載された「裁判官の余白録」という短いコラムをまとめたもの。『世界』らしからぬやわらかい筆致と考えに驚いた。たとえば……。

――裁判員裁判における死刑第1号事件で裁判長が判決の言渡し後、被告人に控訴を勧めたことがマスコミ等で批判された。しかし、これもおそらく、裁判員のほうから、自分たちの判断が最後となって判決が確定するときついから、裁判長にお願いしたのではないかと思われる。(「死刑の話」)

――裁判官は、しょせん、社会経験が乏しい。よく学生に、裁判官がかかわらない人生の三大運動とは何かと聞く。労働運動と学生運動と選挙運動である。いずれも、それに関する民事・刑事の事件を扱うが、その経験がないのが普通である。裁判官の経験不足を補うという意味でも、裁判員裁判は、有益である。(「裁判官vs.新聞記者」)

――裁判官と刑事弁護人の本質的な違いは、被告人が本当に真犯人ではないという確信(心証)を持てるかどうかである。私は、控訴審の裁判官として8年間に20件以上の逆転無罪を出しているが、そのなかで真っ白だと思うに至った例は少ない、あるいは、かなり少ないといわざるをえない。多くは、灰色無罪なのである。それは、けしからんと思う人もいるかもしれないが、刑事裁判に求められているのは、白か黒かの判断ではなく、黒と断定できるかどうかの判断である。(「裁判官vs.弁護士」)

――勇気がいるというのは、無罪判決を続出すると、出世に影響して、場合によれば、転勤させられたり、刑事事件から外されたりするのではないかということであろう。これも、残念ながら事実である。その意味で、無罪判決をするには勇気がいるかもしれない。(「『合理的な疑い』とは何か?」)

 裁判制度の「負」の面はすこし顔を覗かせる程度で、やや楽天的に胸の内を語るのも好ましい。裁判本といえば、瀬木比呂志『絶望の裁判所』など、「負」の本ばかり。本書は、たまには何かを「信頼したい」という気持ちにさせてくれる。
 執筆の動機が、「裁判官も世間から見るより、ずっと人間的で素晴らしい人が多い。このことを少しでもわかってもらいたい」という思いからだと。

 それにしても現実に戻れば……。

 「記録あっての裁判であり、人権の保障も適正な裁判もその前提に立っている」とあるが、こう言い換えたい。「記録あっての行政であり、人権の保障も公正な行政もその前提に立っている。

 森友学園問題で、官邸を経産省に奪われた財務省の安倍首相へ“忖度”、佐川宣寿理財局長の国有地売却の交渉記録を記した文書や電子データを廃棄・消去したと「得意げな虚偽答弁」にはうんざりした。その財務省が当時使用していた情報システムを更新したという。

 財務省が更新したシステムは2013年1月から使用していたもの。森友学園が国有地取得要望書を提出した同年9月から、学園に国有地を売却した昨年6月までの全期間で使われていた。職員に貸与されていたパソコンも一斉に更新された。かつて日本を牽引した誇り高きトップ官庁は、いまや“隠蔽と忖度の財務省”となった。
 それにしてもペーパーレスの進行で、電子化された文書など、公文書館のあつかいはどうなっていくのだろう。

著者の「“ヒラメ裁判官”が多いともいわれる。だが、裁判官も職員も、知的にも人間的にもレベルが高く、信頼するに足りる」というフレーズが“虚偽答弁”でないことを祈るばかりである。


今野 敏★去就 隠蔽捜査6  ☆菅義偉“隠蔽”長官をモデルの次作を期待!

20170606

2017.06.06去就-隠蔽捜査



「方針をはっきり決めてくれないと困る。秘密樫に解決するなら、それなりの方法がある。また、世間に発表するなら、別のやり方もある」

「いずれにしろ、一社が嗅ぎつけたら、他社も気づく。
やつら、ゴキブリと同じだ。一匹いたら百匹、だ」


 刑事部長が、マスコミをゴキブリにたとえた、などということがどこかに洩れたら、けっこう大事になるだろう。

 発言者が、どういうニュアンスで言ったかなど、マスコミにとっては問題ではない。彼らは、言葉尻を捉え、前後関係を無視して、糾弾を始める。
 ヤクザの言いがかりや、クレーマーの苦情と同じだ。ジャーナリズムよりセンセーショナリズム。それが今の日本のマスコミの現状だ。

 竜崎は伊丹に言った。
「つまり、そのうちにマスコミが大挙して押し寄せてくるということだ。情報管理が必要だったが、それを怠ったということになる」



★去就 隠蔽捜査6 |今野 敏|新潮社|2016年7月|ISBN:9784103002581|○

 エド・マクベイ「87分署」シリーズやW.P.マッギヴァーン「悪徳警官」の昔から警察小説は大好きだが、今も佐々木譲の道警もの、今野敏「隠蔽捜査」シリーズは読んでいる。

 北方謙三があるインタビューで、小説の質が落ちている、テレビドラマみたいになっている、と発言していた記憶にある。「映画というのは、スクリーンに突如として息を飲むような映像が現れたりするわけよ。その非現実の美が瞬間的に現れるのが映画で、そのよさが小説にもあるべきだと思ってるんだけど、最近は物語を追った小説が多くて」云々。

 たしかに佐々木譲は冒険小説のころの文体と著しく変わり、セリフとト書きを読んでいるようなそっけなさがある。今野敏『去就 隠蔽捜査6』も同様で1時間もあれば読み終わる。季節の挨拶から始める当方のメールと、「り」という一語だけの孫の返信との差かなと思う。上掲の場面でも、地の文と主人公のセリフとの違いが分からない。

 それはともかく、隠蔽捜査シリーズは2005年以来、長短あわせ本書『去就』で8冊目である。今回はストーカーがテーマだが、竜崎伸也大森署長、伊丹俊太郎警視庁刑事部長に加え、新たにノンキャリアの弓削篤郎方面部長が登場したものの、ややマンネリか。

 そこで提案したいのが、次作は菅義偉“隠蔽”官房長官をモデルにしたらいかがかと。上掲の「やつら、ゴキブリと同じだ。一匹いたら百匹、だ」に似たセリフを菅“隠蔽”長官はオフレコでしゃべっているのでははないか。

 さて安倍晋三首相追及は、森友学園問題から加計学園問題に移行している。当方は、当初、園児たちの「安倍晋三内閣総理大臣を、一生懸命支えていらっしゃる昭恵夫人、本当にありがとうございます。安保法制国会通過よかったです」の唱和の映像に鳥肌が立った。

 が、森友問題は、①家庭内野党とかリベラルな考えをもつという安倍“アキレ”夫人の“印象操作”が剥がれ、卑しい似たもの夫婦、単なる晋三のコピーだったと分かったこと、②官邸を牛耳っている経産省出身の今井尚哉首相秘書官などに対し、失地回復に必死の財務省官僚の“忖度”右往左往を目の当たりにしたこと、が成果だった。

 加計学園問題では、①いまどき珍しく地盤、看板、鞄なき政治家として、ついには内閣官房長官最長記録を更新中という菅義偉官房長官が、馬脚を現わし下卑た男だと分かったこと。②安倍首相が“お友達ずぶずぶ隠蔽”論点ずらし答弁の醜態を万人の目にさらしたこと、が成果だった。

 菅“隠蔽”長官のセリフ。「その指摘は全くあたらない。粛々と進める方針は、いささかも揺らぐことはない」。二の句が継げない、対話を拒否する答弁である。しかも前川喜平前文部科学省事務次官への誹謗は、手を変え品を変え下品な個人攻撃に終始する。「教育行政のトップが出会い系バーに行き小遣いまで与えていたことに、国民のみなさんもそうでしょうが極めて違和感を感ずる」と下品な薄ら笑いを浮かべながらの発言。当方はかねがね安倍よりも菅を攻めよと思ってきたが、ここへきてメディアの一部は、菅“隠蔽”長官の卑しい品性に気づきはじめたようだ。

 その前川喜平前事務次官はどこか「隠蔽捜査」の竜崎伸也を思い起こさせるところがある。警察庁出身の杉田和博官房副長官は、前川前次官が現職の時に出会い系への出入りを注意したという。私生活まで監視していたらしい。また“官邸御用達”ジャーナリスト山口敬之が準強姦容疑で逮捕される寸前だったのを、菅義偉官房長官の右腕といわれるエリート警察官僚中村格刑事部長(現警察庁組織犯罪対策部長)が捜査にストップをかけていたというのも、サイドストリーとして盛り込んでもらいたい。ついでに読売新聞の卑しい品性の記者も登場させるのもいい。

 それにしても“姑息な安倍”は、野党の追及に“印象操作”だと反論しているが、みずからの“隠蔽操作”の間違いではないか。お友達は胡散臭い連中ばかり。落選中は加計学園に養ってもらっていた萩生田光一副長官。「総理は自分の口から言えないから、私が代わって」とねじ込んだ和泉洋人首相補佐官。文科省OB・加計学園理事・内閣官房参与の“三つ股”木曽功。それらが官邸内を闊歩している。

 今野敏さま。『隠蔽捜査』次回作は、ぜひ“卑しい”菅義偉“隠蔽”長官を敵役に、竜崎伸也署長が一矢報いる物語で、読者をすかっとさせてください。



菅野完★日本会議の研究

20170428

日本会議の研究


 園児に戦時歌謡を歌わせる塚本幼稚園、そして籠池姓の人物が「生長の家原理主義運動」と強く関わりがあるといってもいいだろう。

「安倍後継の最有力候補」稲田朋美や「官邸側のイデオローグ」百地章、そして園児に戦時歌謡を歌わせる「塚本幼稚園」をつなぐ「生長の家原理主義運動」という一本の線が浮かび上がってきた。〔…〕

 宗教法人「生長の家」本体は、1983年に政治運動から撤退している。しかし、その路線変更を良しとしない古参信徒たちが今、教団に反旗を翻し「生長の家原理主義」運動を展開中であり、その運動に、稲田朋美や百地章など、安倍政権と深いつながりを持つ政治家・学者が参画している。

 さらにこの「生長の家原理主義」運動は、塚本幼稚園の事例のように、政治の世界だけでなく、市民社会の中にあって、ファナティックな右傾化風潮を醸し出す要素の一つとなっている。


★日本会議の研究 |菅野完|扶桑社新書|2016年5月|ISBN:9784594074760 |○

いわゆる森友問題は、瑞穂の國記念小學院新設のための国有地の格安払い下げ問題に端を発し、特異なキャラクターの籠池泰典森友学園理事長とその妻、顧問弁護士であった稲田明美防衛大臣の連続虚偽答弁、安倍昭恵夫人の名誉校長就任、百万円寄付問題、松井大阪府知事の論点ずらしの“すり替え”発言、財務省の安倍首相へ“忖度”、佐川宣寿理財局長の得意げな“隠蔽”答弁、総理大臣夫人付官邸職員の暴走、官邸の姑息な動き等々、めまぐるしく動いた。

  この著者が一躍脚光を浴びたのは、籠池理事長の“代理人”のような立場で、新聞、テレビの取材に応じ、生中継されてからである。このときの取材者に対する著者の批判は半端ではなかった。いちいち的を射ていた。その一部……。

「判断の責任を問われるべきは、私人である籠池泰典森友学園理事長ではなくて公人である前理財局長・迫田英典国税庁長官と松井一郎大阪府知事ではないですか? マイクを向け、カメラを向けるべきは、政治家と役人ではないですか?なぜ二人の家に行かないんですか?」(2017年3月15日)

  これも別のところに書いたが、当方は、当初、塚本幼稚園の園児たちが、「日本国のために活躍されている安倍晋三内閣総理大臣を、一生懸命支えていらっしゃる昭恵夫人、本当にありがとうございます。安保法制国会通過よかったです」の唱和の映像に鳥肌が立つほど驚いた。昭恵夫人は「感動しちゃいました」と涙を流した場面である。

 籠池理事長の政治思想、教育方針は全面的に否定したい。しかし官邸、財務省、大阪府の“平気で嘘をつく”やり方に憤りを覚え、籠池がんばれと言いたくなっている。また官邸周辺の評論家、コメンテーターたちの菅野完の“悪行あばき”という姑息な手段にもあきれる。

 で、菅野完(すがのたもつ)って何者?となって本書を手にした。

「たとえ過去10年間で日本政治が保守化したとしても、それは政治家の右傾化であって、有権者の政策位置が右に寄ったのではない」と世論調査を分析した谷口将紀東大教授。
 この指摘を引用したうえで、「社会全体として右傾化したとは言い難いにもかかわらず、政権担当者周辺と路上の跳ねっ返りどもだけが、急速に右傾化している……。これはなんとも不思議だ」と。

 ――「安倍政権の反動ぶりも、路上で巻き起こるヘイトの嵐も、『社会全体の右傾化』によっ
てもたらされたものではなく、実は、ごくごく一握りの一部の人々が長年にわたって続けてきた『市民運動』の結実なのではないか?」
(本書)

 そして著者は“日本の保守圧力団体”である「日本会議」の存在に行き着くのだ。
 常に「なぜメディアはこれまで日本会議のことを書かなかったのだ」という憤りが取材や執筆のモチベーションだった、とあとがきに記す。しかし調査・報告はやはり新聞やテレビ以外の仕事だ、と気づく。

 なお、本書は、登場人物の一人が扶桑社に対して出版差し止めの仮処分を申し立てており、東京地裁は1カ所の記述について「真実でない部分がある」として仮処分を認めた。これにより36字を抹消した「修正版」が販売されている。
 また著者に対して名誉毀損として損害賠償などを求めている別の裁判も進行中である。

 驚いたのは、本書が大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞(従来の大宅賞を衣替え)の候補になっていることだ。残念ながら本書は“取材ノート”をそのまま本にしたような粗削りで、資料集のようで“作品”ではない。著者はおそらく“森友問題”を新しく執筆中だと思うが、これぞノンフィクションという出来になり、そしてベストセラーになり、安倍内閣に強烈な打撃を与えることを期待したい。


青木理★日本会議の正体
青木理★安倍三代





青木理★日本会議の正体

20170428

日本会議の正体


 まず、日本会議の源流が新興宗教団体・生長の家にあるのはもはや疑いない。いや、正確に言うなら、生長の家に出自を持つ者たちによる政治活動が日本会議へとつらなる戦後日本の右派運動の源流になった、と記すべきだろう。

 あらためて強調しておかねばならないが、現在の宗教団体・生長の家は一切の政治活動を行っておらず、日本会議とは組織的な関係をまったく有していない。〔…〕

 日本会議の源流となったのが新興宗教・生長の家に出自を持つ右派の政治活動家たちだったとするならば、

 現在の日本会議を主柱的に支えているのが、伊勢神宮を本宗と仰ぐ神社本庁を頂点とした神道の宗教集団である。


 いくら生長の家出身の活動家らが熱心かつ執拗だとはいっても、彼ら自身が巨大な動員力や資金力を持っているわけではない。この点において宗教団体としての神道と神社界には、けた外れの動員力と資金力と影響力がある


★日本会議の正体 |青木理|平凡社新書|2016年7月|ISBN:9784582858181 |○

 日本会議に関する本が目白押しである。本書もその一つ。“日本最大の草の根右派組織”である「日本会議」について、そのルーツである「生長の家」から現在の活動の中枢である神社本庁、そして運動のテーマ、安倍内閣との係わりなどを探った“基礎編”というべき一書である。とりあえず日本会議のメインテーマを本書から引用する。

 ――①天皇、皇室、天皇制の護持とその崇敬、続いては②現行憲法とそれに象徴される戦後体制の打破、そして、これに付随するものとして③「愛国的」な教育の推進、④「伝統的」な家族観の固守、⑤「自虐的」な歴史観の否定。(本書)

 ――日本会議とは、表面的な“顔”としては右派系の著名文化人、財界人、学者らを押し立ててはいるものの、実態は「宗教右派団体」に近い政治集団だと断ずるべきなのだろう。そこに通奏低音のように流れているのは戦前体制――すなわち天皇中心の国家体制への回帰願望である。〔…〕その「宗教右派集団」が先導する政治活動は、確かにいま、勢いを増し、現実政治への影響力を高めている。(本書)

 実は当方、日本会議のルーツとされる谷口雅春の生長の家には記憶がある。明治最後の年に生まれた父は、部屋に『生命の実相』全20巻と雑誌『生長の家』を置いていた。父が読んでいるのを見たことがないし、家族に語ったこともない。父は「病気の治癒」や「人生苦の解決」に悩んでいたわけではない。
 
 父に内緒で『生命の実相』を開いてみたことがある。仏教、神道、儒教、キリスト教などがごちゃ混ぜになって、そのうえフロイドやマルクスも引用されていた。本書でも大宅壮一の谷口雅春論が引用されているが、いま手元のある『昭和怪物伝』(1973・角川文庫)の「谷口雅春」の章を見ると……。

 谷口は神戸出身で、中退した早大では青野季吉、西条八十、木村毅、直木三十五などと同級であり、もともと小説家志望で、この国の“神々の世界”には見当らない文筆的表現力をもっていたという。当時のパンフレットによると、生長の家を『宗教百貨店』といい、ある人は『抜粋』といい、真理なる生粋の優良真理を抜粋して陳列してあるのであります、と。
 
 カモのされた政治家は鳩山-郎。鳩山が脳溢血で倒れたのは、吉田茂に対する悪感情からで、復帰でき、さらに鳩山内閣ができたのはのは、信者の「熱心なる神想観」の結果だという。谷口と鳩山の共著『危機に立つ日本』と題するパンフレットがあるという。

 ――警戒にあたるべきメディアもひどく鈍感で、たとえば2016年5月のG7サミットが伊勢志摩で開かれ、安倍が各国首脳を伊勢神宮へと誘ったことを批判的に捉える報道すら皆無だった。神社本庁が本宗と仰ぐ伊勢神宮にスポットライトが当てられたことは、日本会議と神社本庁にとっては悲願ともいうべき出来事であったにもかかわらず――。(本書)

 たしかにG7サミットの伊勢志摩を会場にしたのは警備を優先したからと安倍内閣は強調した。伊勢神宮がそばにあり、当方、不吉な予感がしたが、まさかオバマ、メルケル、キャメロン、オランドなど各国首脳を“参拝”させるとは思わなかった。安倍と日本会議のメンバーは会心の笑みをもらしたに違いない。「政教分離」の大原則を侵しかねない一大事だった。

青木理★安倍三代
菅野完★日本会議の研究

04政治の品格│T版 2016年1月~3月★本田雅俊★井戸まさえ

20160405

04政治の品格2
★本田雅俊│元総理の晩節

当人たちが望む晩節や老後を過ごせたかどうか、過ごせているかどうかの最も大きな決定要因は、月並みながら健康状態に他ならない。

★本田雅俊│元総理の晩節――平成の首相にみる生き様△2015.11


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 本田雅俊『元総理の晩節』は、竹下登から野田佳彦まで平成の27年間、17人の元総理を軽やかに素描する。
 うち13人が健在。どおりで鬱陶しいはずだ。政治から離れ余生を愉しんでいるはずの細川護煕、小泉純一郎が都知事選で騒ぎを起こしたのには思わず失笑した。
 当方のワースト3は、小泉、菅、安倍。その理由、品位がない。





★井戸まさえ│無戸籍の日本人

裁判官が「信用しがたい」「不自然である」としたことが「当たり前」に起こっているのが無戸籍問題であり、拒絶され続けてきたのが無戸籍者たちなのだ。

★井戸まさえ│無戸籍の日本人│〇2016.01


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 無戸籍で就学できなかった者がパソコンが使え語彙も豊富な陳述書を書いたゆえ、裁判官は「却下」。日本の社会が見て見ぬ振りをしてきた性・国籍・出自・貧困・搾取・犯罪・女性、それらが重なり合ったところに無戸籍問題は存在するのだと、井戸まさえ『無戸籍の日本人』
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 『無戸籍の日本人』の著者井戸まさえも再婚後の子どもが一時無国籍状態になったことから、NPOを主宰し、千人以上の無国籍者の支援にかかわる。民法第772条に「離婚後300日以内に生まれた子供の父は前夫」の規定があり、2015年12月最高裁は再婚禁止期間の100日を超える部分については違憲とした。今後は「離婚後100日問題⁉」



04政治の品格│T版 2015年12月

20151231

04政治の品格2
★高井有一『時のながめ』

私はもはや70歳、退隠の季節を迎へた身だから、先行きに望む事は多くはない。ただ一つ、超大国に迎合し、進んで他国への武力行使に参加する事態に遭ふのだけは御免だ。――書いてみて虚しくなる。もの哀しくもなる。戦後58年が経った今、どうしてこんな事を書かなくてはならないのか。

貴重だった筈の〈昭和〉の体験は、いつの間に、どこへ、吹き飛んでしまったのだらう。
(2003)

★高井有一『時のながめ』△2015


1932年生まれの作家の短文集。ほぼ全編友人知己を悼む文章で埋まる。時に戦争のこと、ふるさと角館のこと。そういえば角館青柳家には著者の「葉桜や直武もいて歴史村」の色紙が展示されていた。それにしても2015年は「もはや戦前である」ことの色濃き年だった。


04政治の品格│T版 2015年9月~11月

20151208

04政治の品格2
★大久保潤・篠原章『沖縄の不都合な真実』

 翁長知事は、選挙戦で戦った仲井眞弘多前知事とともに日本政府から振興策を引き出してきた人です。

 「振興策はいらないから基地を減らせ」と安倍晋三首相に面と向かって言えるかどうかが、沖縄の将来を決定づけます。


★大久保潤・篠原章『沖縄の不都合な真実』〇2015


 『沖縄の不都合な真実』によれば、「民意」といっても辺野古移設反対派は知事選で53%、衆院選では59%で「沖縄は一つ」とは言い難い。
 が、しかし賛成派・反対派とも中枢を琉球大OBが占め、裏で手を握り沖縄を支配しているという。“茶番”と知りつつ沖縄と政府の話し合いというメディアの“建前”報道がこの夏も続いている。
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 私たちも移設反対の立場です。基地反対運動は、「沖縄の心」や「平和への願い」を強調しながら「基地反対・移設反対」を唱えますが、私たちは、辺野古移設は税金の壮大な無駄遣いになる可能性があるがゆえに支持できないのです。(大久保潤,・篠原章)




★高山文彦『ふたり――皇后美智子と石牟礼道子』

苦しい出来事や悲しい出来事の中には、幸せにつながっている出来事がたくさん含まれている。このことに気づくか、気づかないかで、その人生は大きく変わっていく。

気づくには、ひとつだけ条件がある。それは出来事と正面から向かい合うことである。
 (水俣病資料館語り部・緒方正実)

★高山文彦『ふたり――皇后美智子と石牟礼道子』〇2015


 2013年、「全国豊かな海づくり大会」のため、天皇皇后は水俣を訪問し、水俣病の胎児性患者や語り部と面会する。
 『ふたり――皇后美智子と石牟礼道子』は、政治的利用のぎりぎりの境での天皇の行動と発言、その“秘録”。その地にある天皇御製碑にある歌「あまたなる人の患ひのもととなりし海にむかひて魚放ちけり」。










04/政治の品格│T版 2015年4月~8月

20150908

04/政治の品格│T版 2015年4月~8月
04政治の品格2


**2015.04.02
★山田真『水俣から福島へ』

そもそも許容量というものは原子力産業を推進する側が自分たちの都合で作り出した概念で、政治的な概念といってよいものだ。科学的に許容量、つまり人間が浴びてもよい放射線の限度など決めることはできないのだ。★山田真『水俣から福島へ』
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『水俣から福島へ』の山田真は、ヒ素ミルク、水俣病、広島被曝等に小児科医として係わる。2011年福島で健康相談会を開催。6月、子どもは住めない環境かとの相談多数。7月、相談に行くこと自体が風評被害とされ激減。そして2014年、国や東電に絶望し何も言わなくなってしまった福島の人たち。




**2015.04.16
★加藤周一『最終講義』

また戦争できるように日本の経済と制度を変えていこうという動きに対抗しょうとする。それが「九条の会」です。私はいま、少なくとも歩行できる程度の体力が残っていれば、抵抗したいと思います。書くときは「花鳥風月」ではなくて、「九条」にふれる。★加藤周一『最終講義』
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2005年北京清華大学での講演「私の人生、文学の歩み」。「加藤の言葉は日本の良心の声として、会場の学生にとどまらず、広く深く人びとの心に染みこんでいったに違いない」と山本晴彦が巻末に。講演や座談を4編収録した『加藤修一最終講義』2013。△知の巨人、没後5周年記念出版。




**2015.04.17
★姜誠『またがりビトのすすめ』

領土争いは紛争国双方の人びとに排外と不寛容をもたらし、二国間の交流、連携、協働を壊すものでしかない。であれば、日比谷公園ほどの広さの岩礁をめぐって角付き合わせるより、いっそのこと竹島を日韓の「もやいの島」と見なし、共同で管理しょうとの解決策がすぐに浮かぶはずだ。★姜誠『またがりビトのすすめ』
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姜誠は、ワールドカップ外国人ボランティアを組織したり、ナショナリズムから距離を置く学校をつくったり、魅力的な実践派の在日三世。コリア系日本人の道を選ばない理由もわかった。だが竹島の提案はがっかり。「外国人」をやっていると見えること、姜誠『またがりビトのすすめ』〇2014。




**2015.04.30
★朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠9』

「生活の糧となってきたこと、使命と思ってきたこと、心のよりどころ、喜び、楽しみ、生きがいのすべてを一瞬にして奪われました」福島原発避難者訴訟・原告団長早川篤雄★朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠9』△2015
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2012年12月、原発事故の避難者らが起こした日本で初めての集団訴訟。訴状で「ふるさと(コミュニティー)喪失の慰謝料」という考え方を示した。『プロメテウスの罠9』は、この「ふるさと訴訟」のほか、原発ゼロの二人の元首相、もんじゅ点検漏れ、広島祝島抵抗32年など、北は函館南は宮古島の全国各地から。



**2015.05.06
★安田峰俊『境界の民 マージナル・マン』

「なにも知らないで日本で生まれ育ったんですが、物心がついたら日本人じゃなかったんです。日本語が母語なんだけど、ベトナムの名前を持っているのもあって、周囲からも『なんとなく外国人』として見られていて。でも、15歳のとき、はじめて家族とベトナムに行って『あれ?ここも自分の故郷じゃない。自分はどこにも属していない』と感じてしまったんです」(無国籍者ハウ)★安田峰俊『境界の民』△2015
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『境界の民――難民、遺民、抵抗者。国と国の境界線に立つ人々』。国家という枠組みからはじき出された人たちを東南アジア、中国に訪ね、勢い余って空回りの気配はあるが、「境界」の場所に置かれていた人々によるルールの書き換え要求が強まる時代になったと、著者。そこから見える日本を問うノンフィクション。




**2015.05.13
★古川美穂『東北ショック・ドクトリン』

「創造的復興」の掛け声は、あたかもブルドーザーのように、これまでの連綿と続いてきた地域の生活や文化をもなぎ倒す。先祖代々の汗や血のしみ込んだ土地を、ビジネスのためにゼロからプランニングできる更地に変える。★古川美穂『東北ショック・ドクトリン』○2015
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地元や県内の人々で構成された岩手県の復興委員会や福島県の復興ビジョン検討委員会に比べ、宮城県の震災復興会議は財閥系シンクタンクのトップなど東京中心で、被災した地元市町村からの委員はいない。仙台空港民営化、その隣接地へのカジノ、民間活用の水産特区など、村井宮城県知事の「創造的復興」批判の現地ルポ。



**2015.05.15
★佐藤優『プラハの憂鬱』

「信仰がすべての災いのもとで、宗教を信じる人が不毛な殺し合いばかりを続ける。カトリック教会とプロテスタント教会が和解し、宗教戦争がなくなったら、今度は民族という宗教が生まれた」亡命チェコ人ズデニェク★佐藤優『プラハの憂鬱』◎2015
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佐藤優『プラハの憂鬱』は、チェコの神学と思想に興味を持つ若き著者の『紳士協定』に続く英国滞在時の自己形成物語。当方がまったく縁のない人物や話題だが、若き著者と品格のある人物との交遊の記録が、なぜこれほど知的興奮を呼ぶのだ。




**2015.05.25
★松田賢弥『権力者 血脈の宿命』

結婚前、昭恵が安倍総理と付き合っているとき、昭恵が「総理になったら何をしたい?」と聞いたら、総理は一言、「憲法改正」と言ったという。★松田賢弥『権力者 血脈の宿命――安倍・小泉・小沢・青木・竹下・角栄の裸の実像』△2015
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安倍晋三、竹下登、金丸信、小渕恵三、小沢一郎、小泉純一郎等の『権力者 血脈の宿命』。週刊現代などで“暴いた血脈”。だが顔ぶれを見ればわかるが、加筆しているものの記事が古い。安倍晋三はなぜ父晋太郎より、当時6歳、アンポハンタイ、キシヲタオセの祖父岸信介の血筋を重んじるのか。マザコン晋三が描かれている。



**2015.07.29
★浅田次郎『日本の「運命」について語ろう』

ところが、この参勤交代の廃止には思いもかけぬ弊害がありました。〔…〕大失業時代が来てしまいました。その結果、失業した人たちが江戸で遊民化してしまう。道中の宿場が荒廃してしまう。社会経済が思いがけずバラバラに崩壊してしまったんですね。★浅田次郎『日本の「運命」について語ろう』
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参勤交代のための中間や荷担ぎなど奉公人に仕事がなくなり、江戸屋敷詰めの家臣もリストラ、街道や宿場の整備も不要、江戸と各地の文化の行き来もなくなり、中央集権も幕府の求心力もなくなっていった。中山道を舞台に参勤交代を描いた小説『一路』、その取材の派生物が『浅田次郎と歩く中山道 』、そしてこの講演。テレビドラマはロードムービー時代劇と銘打って始まる。



**2015.08.01
★佐藤優・手嶋龍一『賢者の戦略――生き残るためのインテリジェンス』

声明文は、出先の大使館どころか、政権の三首脳、すなわち、オバマ大統領、バイデン副大統領、ケリー国務長官が協議しています。国務省側が用意した原文には、「失望」のくだりは盛り込まれていませんでした。かつて安倍総理に「靖国参拝は控えてほしい」と釘を刺したことがあるバイデン副大統領が自ら筆を執って、「失望(disappointed)」と書き加えた事実を大統領補佐官のひとりが明かしています。★佐藤優・手嶋龍一『賢者の戦略――生き残るためのインテリジェンス』
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2013年12月26日、安倍首相は靖国神社参拝に踏み切る。中国、韓国の反発は織り込み済みだったが、アメリカが最も厳しかった。大使館“失望”声明を直ちに国務省声明に切り替えた。さて、2015年夏、安倍首相の「戦後70年談話」」で再度愚を繰り返すか。「謝罪」「侵略」を盛り込むか。佐藤優、手嶋龍一の対談シリーズは、たえず一面的なメディアを痛烈に批判するところに魅力がある。




**2015.08.31
★御厨貴『政治の眼力――永田町「快人・怪物」列伝』

「人物評論」の妙味は、舌鋒鋭く対象を完膚なきまでにこきおろすことにあるのではない。むしろ今を掘り下げるために、当人も思ってもみなかった美点を探りあて隠されていた選択肢を提示することに醍醐味がある。★御厨貴『政治の眼力――永田町「快人・怪物」列伝』△2015
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安倍政権を支える人、自民党の実力者、将来の首相候補、失意の人など20数人を俎上にのせた人物短評。今後のオーラルヒストリー対象者ばかりなので「歯に衣着せたまま」のゆるゆる評論。動態的的なのでと言い訳。『権力の館を歩く』の著者らしく、議事堂4階からこっそり参院に抜け出て工作する小泉純一郎のエピソードが面白い。
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それにしてもNHKは異常。30日夜7時のニュース。国会周辺の8.30安保法案反対集会。主催者12万、警視庁3万の発表。“戦争法案反対”を叫ぶその参加者の数を映像でとらえるべきなのに、野党4党首の演説のアップだけ。なんとも姑息な”市民隠し”の画面づくりだ。







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Author:koberandom

1冊の本の中で「気になるフレーズ」を見つけることが“書評”である、と。



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平成引用句辞典2013.02~
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