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category: 09/旅ゆけば  1/8

清水浩史◎幻島図鑑――不思議な島の物語    …………☆やがてすべてが無人となる島々の“風土記”

 幻の島、だ。地図には記載されているものの、島の存在は確認できない。ただただ、オホーツクの青い海が広がっているのみ。いったい島はどこへ消えてしまったのか。〔…〕 エサンベ鼻北小島は、もともと名称がなかったが、2014年に名前がつけられて地図に記載されることとなった。 その理由は、外洋に存在し、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)の範囲を決める基点となる島だからだ。〔…〕 根拠は、1987年に実施された古い測量デ...

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荻田泰永◎考える脚――北極冒険家が考える、リスクとカネと歩くこと    …………☆退くのに勇気は要らない。勇気が必要なのは、前進する時だ

 旅とは、日常と非日常の逆転にその本領があると私は思っている。 多くの人は、自分の生活している世界から遠く離れたところへ旅行することに「非日常性」を求めていく。 しかし、旅に出た価値が生まれるのは、行った先が日常となり、本来自分がいた場所が非日常に感じられる瞬間だ。 その時、自分が知っていた世界、当たり前だと思っていた日常を別の見方で捉える視点を持つ。 日常と非日常ではなく「たくさんの日常」を行き...

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稲垣えみ子◎人生はどこでもドア――リヨンの14日間    …………☆“実用記事”満載の海外民宿「旅」の本であるが、ひとり暮らしの若者や老人に“生活”のヒントを与えてくれる本でもある

 そうなんだ。私の居場所は世界至るところに広がったのである。 これまで、そんなワールドワイドな人になるためには、語学力や、情報や、コネや、お金が必要なんだと思っていた。〔…〕でも、そもそもそういうことじゃなかったのである。 必要なのは語学力でも情報でもコネでもお金でもなく「自分」だったのだ。 〔…〕いつもやっていないことが旅行したからといってできるわけじゃない。それを認めればよかっただけのことなんだ...

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高野秀行◎辺境メシ――ヤバそうだから食べてみた …………☆臭ければ臭いほどに発酵の匂いには郷愁をそそるものがある

 ある病院の院長に頼み込んだのだという。ちょうどお産があったので、急いで呼ばれて病院へ取りに行ってきたのだそうだ。〔…〕「気持ち悪いから早くこれを受け取ってくれ」と彼は袋を放ってよこした。 胎盤は、ついさっき、誰かのお腹から出てきたばかりらしく、新鮮な刺身のような匂いがした。これを餃子にして喰うのか。 いよいよ胎盤の調理だ。〔…〕 これを丸ごと、鍋で茹でるとすさまじい悪臭を発し、見てくれも腐りかけの...

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ドリアン助川◆線量計と奥の細道 …………☆1689年に芭蕉の歩いた道は、300年後の今、太平洋側も日本海側も原発抜きには語れない

  しかしそれにしても、象潟という地よ。 私は、ひとつのシンボルとしてこの地を捉えたい。 たった三百余年で、風景と環境はこれだけ変わるのだ。象潟の海に島々ができたのも、そこが盛り上がって陸地になってしまったのも、鳥海山の噴火と地震活動のせいだ。すなわちやはりこの列島は生きている。 環太平洋の火山地域は常に激しく身震いし、土地の形を変え続けている。三百余年なんて地球史的にはほんの一瞬だ。 それほど揺...

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福島あずさ/絵:nakaban ◆窓から見える世界の風    …………☆地域の生活に大きな影響をもたらす“極地風”の数々

「あらし」とは、現代ではStormの訳語として低気圧や台風などに使われる言葉ですが、日本各地で山から平野、陸から海へと吹き出す局地風にも「あらし」という名がつけられています。 瀬戸内海と伊予水道のちょうど境目あたり、伊予長浜市を流れる肱川(ひじかわ)にも、知る人ぞ知る「あらし」が起こります。 このあらしの大きな特徴は、目に見える風であること。 夜明けから午前にかけて肱川の上を吹く強風に、上流の大洲盆地...

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清水浩史◆深夜航路   午前0時からはじまる船旅 …………☆全14航路。乗ることが目的だが、その先の“旅”もある

 夜の海に吸い込まれないでよ」と。 ちょっと真意を測りかねて、間が開いてしまう。「貸し切りだよ。今夜の船は。お客さんはひとりだけだから」と、船員さんは笑顔でいう。「え?」と驚いて訊くと、この便では徒歩客が自分ひとりというだけでなく、トラックも乗用車も乗らないという。  〔…〕絵本『幸せのきっぶ』の話を今再び思い出す。主人公の少年が、かつて母に教えてもらった言葉を再度引いてみたい。「だれもいない列車に...

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国分 拓◆ノモレ  …………☆南米ペルーの先住民イネ族の“100年の伝承”を記す叙事詩であり、ペルー・アマゾンの現在を浮き彫りにするノンフィクション。

 川岸に着くと、2人の男が対岸に立ち、こちらを見ていた。背筋の伸びた、綺麗な立ち姿だった。 川を挟んで、ロメウは2人のイゾラドと向き合った。〔…〕伝統的なイネの言葉で呼びかけることにした。それは、森で知らない者と出会ったとき、敵なのか味方なのか、相手を推し量る時に使う言葉でもあった。 かつて、祖父に聞いたことがある。その言葉をかけて返事が来たら味方、来なかったら敵なのだ、と。 ノモレ! ノモレ! ロメウ...

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与那原恵◆帰る家もなく …………☆洞窟部屋に暮らし、沖縄へ、そしてときどき過去への旅

そういえば、私の部屋は「洞窟」のごときである。 壁面、窓もふさいで本棚がある。ごちゃごちゃと本を詰め込んであり、どうして崩れないのか不思議なほどだ。コピーした資料を入れたダンボール箱がいくつあるのか、数えるのも恐ろしい。床にも本の山があり、今や山脈を成している。片付けるべきだが、どこから手をつけてよいのかわからない。 これが住まいか、とあきれるばかりだが、ある時、私は自宅で仕事をしているのではなく...

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神長幹雄◆未完の巡礼――冒険者たちへのオマージュ …………☆植村直己、山田昇の足跡を訪ねたマッキンリー、自然を畏怖する学びの旅

 植村直己が消息を絶ち、山田昇たち3人が遭難した山だというだけで、私には特別な山という意識があった。もちろん厳冬期の烈風の厳しさは想像もできないが、しかしほんとうのところはわかり得ない。 厳冬期と夏ではまったく比較の対象にならないが、夏なら登頂のチャンスは多いだろう。  ごく少数のライト・エクスペディションで登ってみたいという、極北の孤峰への憧れは強かった。 あの白く大きな山容といい、6000メートルを...

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