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☆読みたい本が続々、……次々読んだ――2018年■傑作ノンフィクション★ベスト10

☆読みたい本が続々、……次々読んだ――
2018年★傑作ノンフィクション ベスト10  
 
2018.12.03◆2018年傑作ノンフィクションベスト10

 2017年11月から2018年10月の1年間に刊行されたノンフィクションのなかから10点を選んだ。
 ノンフィクションが読まれない→売れない→書かれない時代が続いている。といいたいところだが、ことしは“豊作”だった。また「ノンフィクションの中心は“評伝”にならざるを得ない」という当方の予想も外れた。うれしい1年だった。


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はたゆきこ◆おでかけは最高のリハビリ!――要介護5の母とウィーンを旅する


☆ノンフィクション賞にノミネートすべき介護ものの“快作”
2018年2月|雷鳥社

客観的がなんだ。無駄遣いがなんだ。誰がどう言おうと、何と思われようと、将来どうなろうと、今の私たちにはウィーンへ行く理由があり、必要がある。
それは「生きることをあきらめないため」だ。


高井隆一◆認知症鉄道事故裁判――閉じ込めなければ、罪ですか? 

☆JR東海の理不尽な言動の数々に、読者も怒りがこみ上げる
2018年4月|ブックマン社

 しかし一番は、父が降りていったであろう線路に降りる階段が、裁判中も無施錠のまま放置されていたことでした。〔…〕
その場所で父が亡くなった事実を全く無視するかの如くの対応でした。


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小堀鴎一郎◆死を生きた人びと――訪問診療医と355人の患者

☆42の事例、それぞれの生き方、死の迎え方
2018年5月|みすず書房

そのような個々の患者の死の語録を残すことは、誰からも顧みられることなく、無名のままこの世を去った人々への挽歌として意味があるのではないか、


宮下洋一◆安楽死を遂げるまで

☆エンディング・ノートに記したことを見直してみたいと思った「生」と「死」をめぐるノンフィクション
2017年12月|小学館

「私はあなたに点滴の針を入れ、ストッパーのロールを手首に着けました。あなたがそのロールを開くことで、何が起こるか分かっていますか」
「はい、私は死ぬのです」


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岡 啓輔◆バベる! 自力でビルを建てる男  

☆建築家を目指す若者たち必読の私的ガイド
2018年4月|筑摩書房

建築だけをやってて建築ができるようになるほど、この世界は甘くない。
今のお前みたいに建築のことしか考えていないヤツは、いい建築家になんてなれっこない。
だから、何でもいいから建築以外のことをしろ。


秋元雄史◆直島誕生――過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録

☆ガイドブックには書かれていない“アートの直島”が生まれるとき
2018年7月|ディスカヴァ一・トゥエンティワン

 なにか時代を画する、時代を次のフェーズに動かしていくような、そういう奇跡のような記録を残す。そういう作品を、アーティストが直島で制作することを望んだ。
 そうでもしなければ、あの小さな島に誰かが注目してくれることなどないと思ったからだ。


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原 雄一◆宿命――警察庁長官狙撃事件捜査第一課元刑事の23年

☆“国難テロ捜査”であるゆえに、真犯人を起訴せず“未解決”となった
2018年3月|講談社

思案をめぐらせた中村は、世間から強盗事件を起こして捕まった哀れな老人と見られて朽ち果てるよりは、この際、警察庁長官狙撃という偉業を成し遂げたことを明らかにして、注目を集めようと考えた。
そこで、個人的な恨みを晴らす目的などはいっさい封印して、狙撃により警察捜査を加速させ、オウム真理教団を壊滅に追い込んだことを自らの功績や義挙として供述した。


畠山 理仁■黙殺――報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い

☆全裸や候補者名のないポスター、放送禁止用語連発の政見放送の真意は……。
2017年11月|集英社

「『政治に関心を持たないのはなぜなんだ!』という怒りがある。もともと自分が立候補したのは、『なんだこいつは』『なんでこんなやつが立候補しているんだ』と驚きを与えることで、みなさんに政治に関心を持ってほしいと思ったからです」


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松原隆一郎◆頼介伝――無名の起業家が生きた知られざる日本現代史   

☆神戸の今はだれも注目しない造船の町の盛衰
2018年7月|苦楽堂

 のちに日本最大となる暴力団の創始者、昭和を代表する大ミステリー作家、画の巨匠、流通革命家がこの狭いエリアにひしめいていたのだ。そこに頼介も加わった。
 年齢でいえば、1926(昭和2)年の時点で山口春吉が46歳、頼介が29歳、横溝が24歳、東山が18歳、そして中内が4歳である。


佐藤優◆十五の夏 上・下

☆高校生諸君、マサル15歳といっしょに1975年の中欧・ソ連へ旅立とう
2018年3月|幻冬舎

「しかし、資本主義国の人間と親しくしているとトラブルに巻き込まれるんじゃないかと心配にならないのだろうか」
「その辺は、何が許されることで、何が許されないことなのか、両親はよくわかっている。両親はマサルを通じて僕に世界は広いということを伝えようと考えている。





20181203◆ノンフィクション 2

◆2018年傑作ノンフィクション・ベスト10――補遺

 「大宅壮一ノンフィクション賞」が2017年から「大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞」に改称され、大賞のほか、一般読者からの投票を受け付ける読者賞が設けられた。同時に選考委員制度が廃止され、“権威づけ”よりも出版社が売りたい作家、売りたい本に照準をあわせたようだ。

 また講談社ノンフィクション賞も、2019年から「講談社本田靖春ノンフィクション賞」に改称される。選考委員がどうなるか不明。

 他方、「Yahoo!ニュース・本屋大賞ノンフィクション本大賞」が新設された。全国100名ほどの書店員の投票により10作品がノミネートされ、6名の書店員選考委員により決定した。こちらは最初から“売りたい本”である。ノミネート作品は既に書評などで評判になっている作品ばかりで、驚くべきことに書店員による斬新な視点で“発見”された本がまったく見当たらない。



さてベスト10には選ばなかったが、楽しませていただいた10冊。


◎ブログにまとめきれなかったが、注目の2冊

国松俊英◆ノンフィクション児童文学の力
☆先駆者たかしよいち・石川光男・神戸淳吉・木暮正夫と今後の可能性
2017年12月|文溪堂

藤井誠二◆黙秘の壁――名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか
☆「黙秘権」は、加害者を権力から防御するためか、被害者の知りたい真実を隠蔽するためか
2018年5月|潮出版社


◎広義のノンフィクションとして、当方が“お勉強”した2冊

橋本健二◆ 新・日本の階級社会
☆格差拡大、自己責任、アンダークラス、負の連鎖からベーシック-インカム、非階級社会へ
2018年1月|講談社現代新書

新井紀子 ◆AI vs.教科書が読めない子どもたち

☆東ロボくんは100人中80人に勝っている。残る仕事、それは、政治家でしょうね
2018年2月|東洋経済新報社


◎執念の本、ライフワークともいうべき本2冊

樋田毅◆記者襲撃 赤報隊事件30年目の真実

☆書き残すべきことをすべて書いた、このジャーナリズム魂
2018年2月|岩波書店

早瀬圭一◆老いぼれ記者魂――青山学院春木教授事件45年目の結末

☆興味を引くほどの魅力ある加害者・被害者ではないのに、なぜ追うのか。
2018年3月|幻戯書房


◎事件を人物から読み解く2冊

森 功◆悪だくみ ――「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞

☆安倍首相とその側近によるお友だちへの利権誘導事件
2017年12月|文藝春秋

児玉博◆テヘランからきた男――西田厚聰と東芝壊滅
☆“財界総理病”の会長・社長たちの欲望、嫉妬、復讐が東芝を蝕んでいった。
2017年11月|小学館


◎活字ノンフィクションと映像ドキュメンタリーの行方を問う2冊

国分 拓◆ノモレ

☆南米ペルーの先住民イネ族の“100年の伝承”を記す叙事詩であり、ペルー・アマゾンの現在を浮き彫りにするノンフィクション。
2018年6月|新潮社

角幡唯介◆極夜行 

☆ストイックな冒険、ストイックなノンフィクションから、衛星電話、ビデオカメラを使い、私小説ふう作品へ向きを変えた
2018年2月|文藝春秋





20181203◆ノンフィクション3

 このほかにも、注目作が目白押しの2018年のノンフィクション界であった。
 
いとうせいこう◆「国境なき医師団」を見に行く

☆「俺が飢え苦しみ、俺が戦いに巻き込まれ、俺が犯されていたのだった」
2017年11月|講談社

松本 創◆軌道――福知山線脱線事故JR西日本を変えた闘い

☆一人の遺族が「遺族の責務」として原因究明と組織と安全体制の変革を求める、その行動に密着する
2018年4月|東洋経済新報社

ドリアン助川◆線量計と奥の細道

☆1689年に芭蕉の歩いた道は、300年後の今、太平洋側も日本海側も原発抜きには語れない
2018年7月|幻戯書房

島田文六◆失権

☆島田のブンブン、島文オーナー権喪失のてんまつと神戸製鋼所“裏面”話
2017年12月|幻冬舎メディアコンサルティング

朝日新聞取材班◆権力の「背信」――「森友・加計学園問題」スクープの現場
☆安倍“姑息”夫妻と安倍“忖度”お友だちvs.朝日“精鋭”記者たち
2018年6月|朝日新聞出版




20181203◆ノンフィクション4

 このベスト10は、2018年10月末日までの1年間の作品だが、まだまだ、ある。残念ながら現時点では未読だが……。

小田豊二◆初代「君が代」(2018年3月|白水社)
上原隆◆こころ傷んでたえがたき日に(2018年8月|幻冬舎)
村上篤直◆評伝 小室直樹(2018年9月|ミネルヴァ書房)
藤井誠二◆沖縄アンダーグラウンド――売春街を生きた者たち(2018年9月|講談社) 
後藤正治◆拗ね者たらん――本田靖春 人と作品 (2018年11月|講談社)


 以上、2018年傑作ノンフィクション30冊を紹介。この未読5作は、おそらくベスト10を差し替えしなけらばならない傑作揃いの予感がする。年末年始はノンフィクション三昧で過ごしたい。

 そして当方の8年続いた「傑作ノンフィクション・ベスト10」もこれで最終回としたい。
 11月29日に予約していた後藤正治『拗ね者たらん』が届いた。あとがきにこんな記述がある。本田靖春との対談後、タクシーの中での本田の言葉、そして後藤の言葉。

 ――ノンフィクションを書くとは報われることの少ない稼業でしょうが、持続してやっていくうちには何か面白いこともあるでしょうよ。めげずに頑張ってください、と。
そう、持続してやっていくなかで面白いと思えることはさまざまにあった。この稼業を続けてきてよかったと思う。


 ノンフィクションの一愛読者として、この本田と後藤の言葉を、若いノンフィクション作家たちにお贈りしたい。



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