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2019. 04. 18  
2019.04.18-2017.12日本の伝統の正体


 ちなみに、「元号法」ができた時、政府は、

「元号法は、その使用を国民に義務付けるものではない」
「『協力を求める』ことはあっても『強制するとか拘束する』ものではない」
と繰り返し答弁している。

 が、この言いまわしは「わかってるな」「忖度しろよ」と念を押しているようなものだ。


 そして、平成6年「公文書の年表記に関する規則」というものができて、
「公文書の年の表記については、原則として元号を用いるものとする。ただし、西暦による表記を適当と認める場合は、西暦を併記するものとする」
 となった。

 繰り返し述べた政府答弁との整合性が、よくわからない。おかげで現在、公式書類を書く時にはいつも、「今って元号で何年だ?」とわからず、面倒臭いことになっている。〔…〕

 元号は十分に古い伝統だ。でも、結構いいかげんだった。


◎「日本の伝統」の正体 |藤井青銅|2017年12月|柏書房|ISBN:9784760149339|○

 いよいよ「内平らにして、外成る」とはならなかった平成の時代が終わり、まもなく「初春の令月、気淑(よ)く風和(やはら)ぐ」という令和の時代が始まる。

 改元にメディアが大騒ぎし、商魂に火が付き、安倍官邸は皇室をもてあそぶがごとく振る舞い、10連休という悪ふざけもある。

以下、改元に関していくつかの雑談用メモである。

◆「昭和30年代」「1980年代」

 大学での講義をまとめた大澤真幸『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』(2018)に、昭和は64年まであるのに、一番よく使われる年代は「昭和30年代」だという話がでてくる。

 「昭和50年代はどんな社会か」と言われてもイメージが湧かないが、ほぼ同じ時期の「1980年代は?」と聞かれると、「ああ、バブルの時だったね」と、急にイメージが湧く。
 「グローバルな世界を意識し始めた時には、もう日本のローカルな年号では、自分たちの時代を表現できなくなってくる。「1980年代」という言い方をするしかなくなってくるのです」(同書)。

◆平成という時代

 当方はもっぱら西暦を常用している。西暦に12を足したり、平成から12を引いたり、面倒だ.が、元号での括りもあっていい。

 平成の時代、内は1995.1.17、2011.3.11など災害の時代、外は2001.9.11などテロの時代だった。

 日本は「戦争」がなかったから良き時代だったという声がある。だが、安倍内閣は、2013年特定秘密保護法の成立、2014年武器輸出三原則の撤廃、2015年集団的自衛権の容認、2017年共謀罪の成立、そして自衛隊明記の憲法改正案など、着々と「戦争準備」を進めた時代だった。

◆万葉集の令和

 さて令和というネーミングは万葉集巻五の梅花の歌のまえがきから。手元にある万葉本を調べてみた(令和考案者の小西進著作ではないが)。

 ――太宰帥大伴旅人邸の梅園に山上憶良以下下僚30余名が集まり、梅花の宴を催した。中国の落梅の詩になぞらえ、大和歌で梅を詠おうという趣向である。宴席で32首の歌が詠まれ、また後から6首が唱和された。(角川書店編『ビギナーズ・クラシックス 万葉集』

 佐々木信綱編著『新訓万葉集(上巻)』で、その815番から852番をみた。
 「飲みての後は散りぬ」とか、「遊び暮らさな」とか、「君を思ふと夜寐も寝なくに」とか、「今日の間は楽しくあるべし」とか歌われている。

 大嶽洋子『ものがたりとして読む万葉集』によれば、「32人の客たちの歌は大半はおざなりな挨拶歌にとどまる」としており、主人の旅人だけは(安部首相ではないが)大変に満足している。

 梅の花夢に語らく風流(みや)びたる花と我れ思ふ酒に浮かべこそ(852)

2019.04.18-2017.12日本の伝統の正体2

◆『「日本の伝統」の正体』 『「日本の伝統」という幻想』

 さて、本書『「日本の伝統」の正体』は、フェイクな「和の心」に踊らされないための本である。その姉妹本に『「日本の伝統」という幻想』(2018)がある。「伝統ビジネス」、「伝統マウンティング」について書かれたもので、「発信者側にメリットがある伝統は、長く続く」とのべられている。一つ具体例を紹介すると……。

 京都名物といえば、八ッ橋。
 聖護院八ッ橘総本店-創業1689年。井筒八ッ橋本舗-創業1805年。
 この2社が、伝統を巡って訴訟沙汰。が、ほかにも、本家を名乗る八ッ橋がいくつかある。

  ――当事者たちはライバルでありながら、同じマーケットの繁栄は願っている。いや、ひょっとしたら、争うことで話題になり、マーケットが拡充されていく。これはつまり、「伝統の一戦」と同じ構図だ。〔…〕
 伝統ビジネスにおいて「対立」は必ずしもマイナスではなく、プラスになることもあるようだ。 (同書)

◆英語メディアによる「令和」の報道

 米ニューヨーク・タイムズが令和はorder and peace(秩序と平和)、英BBC放送が令和はorder and harmony(秩序と調和)を意味すると報じた。
 あわてて政府は、「Beautiful Harmony=美しい調和」という趣旨だと発表した。「令」が「Beautiful」とは驚きである。
 巧言“令”色の安部官邸らしい対応である。

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