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2013. 08. 22  
20130822徒然草REMIX

清少納言「で、老人の良さって?」

兼好法師「淡泊であまり細かいことを気にせず、あたふた動揺もしない。心は静かで無益なことはせず、我が身をいたわって憂いなく、人の迷惑にならないようにと考える。

老いて後の知恵が若者に優るっていうのは、

若者の容貌が老人に優るようなものなんですよ
」〔…〕

兼「そうそう。『いつも青春』みたいなことを言いたがる老人を見てるとね、『いざ死ぬって時にじたばたするなよ』と、言いたくなってしまうわけです」

清「今の日本の老人達、大丈夫なのかしらね」

兼「いや本当、長すぎる老後っていうのも、考えものですよ。私も、出家後の生活って老後みたいなものだから、『ちょっと早く出家しすぎたか』と思いましたもん。考える時間がありすぎちゃって……」

――「老い」


□徒然草REMIX │酒井順子│新潮社│ISBN:9784103985075│2011年11月│評価=△

〈キャッチコピー〉
同業者の目で「徒然草」を読めば、兼好のホンネが聞こえてくる。女への罵詈雑言、容赦なき田舎者差別、抑えても溢れる自慢話……天下の名著を再発見!

〈ノート〉
序段の「あやしうこそものぐるほしけれ」は、本書の著者によれば、……。

――私の感覚ですと、
「何をしているんだかなぁ、俺」
といった気分ではないかと思うのです。


なかなかいい訳ではないですか。本書のREMIXというのは別バージョンという意味らしいが、キャッチコピーの“同業者”といい、なんと不遜なことか。本書のキャッチコピーでは、「お色直し」としている。なるほど。

しかし光田和伸『恋の隠し方――兼好と「徒然草」』を読んでからは、どの徒然草関連本も旧態依然として魅力がない。

たとえばある女性のふるまいを描いた有名な第32段。「かやうの事は、ただ、朝夕の心づかひによるべし」(こういう優雅なふるまいは、ふだんの生活の心がけによるもの)と兼好。

これに対し、本書では、「男がいつ何時訪ねてさても準備OK、帰った後もその余韻に浸っている女性というのは、愛人体質以外の何物でもありません。〔…〕そんな女に対しては、兼好は「くちをし」からず思うのでした」云々。

源氏物語の花散里まで持ち出し、「いまだに心の底では花数里タイプを求める人が多い世に生きている者とし」憤懣やるかたなく、愛人対専業主婦論を展開している。しかし光田和伸説によれば、「その人、ほどなく失せにけりと聞き侍りし」第32段の女性は、故あって結婚できなかった兼好のかつての恋人である。

「あらまほし」「わびし」「あはれ」「くちをし」など、上掲のように清少納言まで登場させ、兼好との対談を組み、ご機嫌をうかがう一書。

〈読後の一言〉
そういえば、「もちろん、私が今書いておりますこのエッセイもまた、『私はこんな風に一味違った観点から徒然草を読んでいてよ。どう?』という自慢であるわけです」とまで書いている。

〈キーワード〉
老いの知恵・若者の容貌 第32段 愛人対専業主婦論

〈リンク〉
光田和伸□恋の隠し方――兼好と「徒然草」

杉本秀太郎□『徒然草』を読む

清水義範◆身もフタもない日本文学史

酒井順子■ 枕草子REMIX



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