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角川春樹□夕鶴忌――一行詩集

20131015夕鶴忌

辺見じゅんは多彩なジャンルで活躍したが、ある歌人との対談で、次のように述べている。

「もし、私が死んで辺見じゅんって何だったんだろうといった時、残るのは短歌だろうと思うんです。

その自負だけは持っています」


私が辺見じゅんの死を報されてより、気仙沼市、南三陸市を経て仙台に入るまでの問、辺見じゅんの死を悼む挽歌があふれるように生まれてくる。辺見じゅんのイメージは、彼女が中学時代に演じた木下順二の「夕鶴」である。

夕鶴となりて旅立つ野分かな  角川春樹
汝がゆく花野の涯に父が待つ
天の水飲みて夕鶴躯(み)を反らす

もともとは歌とは、神と人に「訴える」ことに由来する。私が辺見じゅんにできる鎮魂のありかたとしては、彼女に対する挽歌を詠むことだけであろう。

――「夕鶴-辺見じゅんと私-」


□夕鶴忌――一行詩集 │角川春樹│文学の森│ISBN:9784864381673│2013年04月│評価=○

〈キャッチコピー〉
姉であり歌人である辺見じゅんへの挽歌。
<夕鶴忌去りゆくものに追ひつけず>

〈ノート〉
辺見じゅん(1939年~2011年)は、角川書店の創業者である角川源義の娘。歌人、ノンフィクション作家であり、父源義から名づけた幻戯書房の社長でもあった。角川春樹、角川歴彦は実弟である。3姉弟がそろって出版社を経営。

当方、春樹、歴彦のイメージから、姉である辺見じゅんの著作は“読まず嫌い”できた。しかし『呪われたシルク・ロード』(1980)を読み、続いて『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(1989)を読んだ。当方、傑作ノンフィクション100選のリストがあり、当時、『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』は未読であったため、リストに入れていないが、ぜひ差し替えたいと思っている。

本書は、弟角川春樹による姉への鎮魂句集である。辺見じゅん歌集『天涯の紺』の次の一首をエピグラフにしている。

遠きひと近き人など呼びてをりかぐはしきかなあちらの時間

辺見じゅんは、かつて木下順二の「夕鶴」を演ずる、と前書きの句。
夕鶴となりて還りし空のあり
辺見じゅんの命日を、「夕鶴忌」と命名、と前書きの句。
夕鶴忌名のなき月の澄みにけり

「寄せ鍋や齢あかりに姉おとと」というじゅんの句にそえて
寄せ鍋やいのちひとつと対(む)き合へり
辺見じゅんに『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』あれば、と前書きの句。
収容所(ラーゲリ)のとほき枯野の日暮の樹

千葉拘置所に辺見じゅんからの手紙あり、と前書きの句。
獄中の遍路に花の便りかな
「花時雨」とは、辺見が発見した新季語、と前書きの句。
帆のごとき人をはるかに花時雨 
今日過ぎて今日はるかなり花時雨


〈読後の一言〉
本書の中の好きな句。「ゆく年の日暮の色に大根煮る」。「とりどりの駄菓子の色も春隣」。とりわけ東日本大震災を詠んだと思われる次の句。「どの子にも青空ありて卒業す

〈キーワード〉
辺見じゅん 挽歌 姉弟

〈リンク〉
辺見じゅん▼夕鶴の家――父と私



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