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2013. 11. 21  
20131121たとえ明日世界が滅びとも

私の旅の経験からするなら、この軍事国家と言われる国、あるいは独裁国家ほど旧来の文化が根強く残っている国家もない。

そのことはビルマにおいてもイラン(イランは殉教国家だが)においてもキューバにおいても同様のことが言えた。

そして皮肉なことに、その独裁国家、あるいは軍事国家が瓦解し、資本主義化され民主化されることによって

旧来の民族文化や人々の営みや自然な風景は急激に破壊され、世界のどこに行っても金太郎飴のような同じような平準な世界に成り代わっていく。
〔…〕

その後20年ぶりに韓国を訪れた私は唖然とした。
あの軍事政権下にあった夢のような風景や人々の営みはすっかり消え、今の日本の延長線のようなそっけない世界が立ち現れていたからである。

――「パンソリ」


□たとえ明日世界が滅びようとも │藤原新也│東京書籍│ISBN:9784487802159│2013年08月│評価=○

〈キャッチコピー〉
神なき時代の神話を目撃せよ。孤独死により救われる生涯もある。現代という荒野に一苗の希望を植える、藤原新也、新たなる伝説。

〈ノート〉
ずいぶん久しぶりに藤原新也の本を手にとった。あのハードな旅の数々ではなく、しみじみと情感あふれるエッセイ集だった。

上掲は、金正日死去を知り、35年前に韓国を旅したとき北朝鮮のスパイに疑われたことを振り返ったもの。

――韓国もまた北と同じように非常に厳しい軍事国家であり、若い人は知らないと思うが、その総領が元秘密警察あがりの黒眼鏡の朴大統領だったわけだ。〔…〕
白黒テレビなどはその日の番組が終了すると、必ず韓国国旗たなびく画面が出てきて軍歌が演奏されて一日の終わりとなった。(本書)

しかし著者の関心は、政治、軍事、経済のことではなく、文化のこと。「奇跡に近い惚れ惚れするような自然な人々の営みや風景が残っていた」という。

上掲表題の「パンソリ」とは、朝鮮半島に昔からある泣き節、恨み節の語り歌のこと。北朝鮮のニュース番組のリ・チュンヒという女性アナの独特の語り口を日本では笑いものにするが、著者は「すでに南では失われているパンソリの正統な泣き節」を見る。

しかし当方は、南にもパンソリは残っており、朴槿恵大統領の日本憎しの“告げ口”こそ、パンソリではないかと思う。

さて、著者は最近は「書行無常」(藤原の造語)というパフォーマンスを行っているらしい。ある現場に立ち、己を空にしたとき、一つの言葉が生み出されてくる。それを書にして揮毫する (本書「虚往実帰」)。

当方、“幻の俳人”鈴木しづ子の本を連続して読んだが、偶然にも本書の「誤謬の中にあるリアリティ」で、「コスモスなどやさしく吹けば死ねないよ」という句を引き、字余りがあり、歌人だとばかり思っていたと書いている。「リアリティというものは時に誤謬の中にも、いやその人独自の誤謬の中にこそ生き生きと息づいているものである」というフレーズは、みごとなしづ子論である。

〈読後の一言〉
3.11に関し、3月18日以降、山形から一関、宮古に入り、ツイッターのような短いブログを積み重ねた「現地行」を掲載している。「たとえ明日世界が滅びようと私は今日林檎の木を植える」はマルティン・ルターの言葉。 

〈キーワード〉 
独裁国家・軍事国家 風景破壊 韓国 パンソリ 

〈リンク〉
藤原新也★東京漂流


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