ホキ・徳田■ヘンリー・ミラーの八人目の妻

20140704

2014.07.04ヘンリー・ミラーの8人目の妻

 「ヘンリーのお友達って、映画監督ばかりじゃない。もう少し映画になりやすい小説書いたら? お友達が良い映画作ってくださるしオモシロいんじゃない?」〔…〕

 と、いつも“ダンナサマはどんな小説お書きになるの”と聞かれるたび、説明出来なくて困るホキがオススメすると

「僕の母親も死ぬ間際に、オマエが小説書くんなら、『風とともに去りぬ』のような映画になるやつ書きなさいって言ったけどね。〔…〕

僕の書いたものが映画ごときになるわけないさ、誰も僕の書いたものを映像なんかに表現できる天才はいないさ」

 とウソブクばかり。

――「北回帰線」


■ヘンリー・ミラーの八人目の妻 │ホキ・徳田│水声社│ISBN:9784801000063│2013年12月│評価=◎おすすめ

〈キャッチコピー〉
 文豪ヘンリー・ミラーの最後の妻が、1960、70年代ロサンゼルスを駆け巡る!自由人ミラーの私生活とハリウッドの古き良き時代を描くドタバタエッセー集。

〈ノート〉
 ホキ徳田、1937年生まれ。元ジャズ歌手。1966年ロサンゼルスへ渡り、ヘンリー・ミラーに出会う。1967年に46歳年上のミラーと結婚し、1978年に離婚。

 本書は27年前に刊行された『文豪夫人の悪夢』(1986)に、その後90年代に書かれたエッセイを加えたもの。

 「この本の元本を書いたころは、軽薄文体でオモシロオカシク書くこと、随所にカタカナ外国語をチリバメルことがお洒落で流行中と思えた。〔…〕しかしあの文体は面白がられたものの、時代が早すぎたのか、下品、浅はか、不真面目、不良っぽい、留学帰りの尻軽女、得意がり屋などと、人格や育ちまで否定された」(あとがき)とある。そこで本書は「すべて加除修正をほどこした」というものの、軽薄体は健在である。

 ハリウッドのインペリアル・ガーデンという日本料理店で弾き語りをし、のち店の一角を借りてギフト・ショップを開く。ジョン・レノンがオノ・ヨーコと来て線香を買う、リンゴ・スターがアフリカの楽器を買う、ミック・ジャガーが数珠を買う、デビッド・ボーイもジョン・トラボルタもスティーヴン・スピルバーグもやってくる。

 ハリウッドへ来ているジャンヌ・モローから「ランチ・オンにいらっしゃい」と誘いの電話。彼女ほどの大女優となると、ホテルには泊まらない。撮影所がベネディクト・キャニオンに彼女用に一軒家を借りる。しかしそこでの出来事は、ちょっと引用するのははばかれる。

 上掲は、『北回帰線』がパリで映画化されることになり、ヘンリー・ミラーとパリへ出かけたときの話。イギリスの作家ローレンス・ダレルも、ヘンリーと会いにパリに出て来ていた。そこへ『シベールの日曜日』の監督セルジュ・ブールギニョン、フランスの監督フランソワ・トリュフォー、ロジェ・バディムなどはやってくる。

 ――ヘンリー・ミラーさんとの10年間の結婚生活では、セックスや体の触れ合いは一度もなかった。〔…〕そのとき私は20代の終わりで、ヘンリーさんは74歳。正直言って、彼に感じたのは「老い」だった。彼の主治医は私に念のため言っておく、と前置きし、「絶対“それ”をしないように。彼が壊れるから……」と忠告した。(本書)

 ヘンリー・ミラーの妻とは名ばかり、ただのオフィシャル・パートナーだったようだ。

 ハリウッドのスターやフランスの映画監督たちだけではない。中曽根康弘、五木寛之、瀬戸内晴美、坂本スミ子、カルーセル麻紀、雪村いづみ等々、数々の懐かしい名前が登場する。

〈読後の一言〉
 “エキサイティングで面白オカシイ”日々を語りながらも、ヘンリー・ミラーの人物像を見事に描き出した。いやぁ、おもしろい。約30年前に書かれたオンリー・イエスタデイ、ホキ徳田の夢のようなバブルの日々である。

〈キーワード〉
「北回帰線」 ハリウッド パリ 『文豪夫人の悪夢』




関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント
プロフィール

koberandom

Author:koberandom



http://koberandom.o.oo7.jp/a-kensaku/index-zen-sakuin.html

Azensakuin_3

最新記事
カテゴリ
平成引用句辞典2013.02~
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR

Pagetop