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後藤正治★天人――深代惇郎と新聞の時代

2015.01.30天人

 すぐれたコラムニストになる素養としての条件はなんだろう――。ふとそう思う。

 知識、教養、体験、見識、文章力……いずれも大切だ。ただ、このようなものは、やがて迎える月日のなかで蓄積され磨かれていく。

 畢竟、文は人なりであるならば、要に位置するものは、人としての器量や度量と呼ばれるもの、

さらにその芯にある〈心根〉であろう。


 このことにおいて深代は恵まれたものをもっていた。青春の季節に到来する普遍のもの、錯誤や自己嫌悪をくぐりつつ、やがて開花する花は、知らず知らずのうちに青い内皮の中でその芯を育んでいた。




 深代惇郎(ふかしろじゅんろう)1929~1975。朝日新聞天声人語を1973年から75年まで担当。当方もそのころ毎朝読んでいたし、『深代惇郎の天声人語』(正続・1976~77)も購入し愛読した。

 著者によれば、新聞のコラムニストは一般にいうエッセイストと異なり、ニュースや社会的な課題を論評する。ジャーナリストによるエッセイだという。

 『天人――深代惇郎と新聞の時代』は、“文品”の記者46年の生涯を同時代の錚々たる新聞人への取材から描いたもの。

 下町の商家に育った読書好きの少年がやがて朝日新聞の記者となり、激しい社会の変転の中、どちらかといえば寡黙で、職場で強烈なリーダーシップを発揮したとも思われないが、ジャーナリストとしての天賦の力を発揮し、同時に気配りの人として先輩同僚後輩から慕われた。

 ――「ふと思う。何事によらず、物事が抽象化されて語りはじめられるとき、それは成熟もしくは衰退する季節に向かっているときなのかもしれない、と。彼らは若く、また新聞も若かった」と著者は綴る。

 おそらく著者は取材を通じ爽やかで心豊かな時間を過ごしたに違いない。

★天人――深代惇郎と新聞の時代│後藤正治│講談社│ISBN:9784062191821│2014年10月│天声人語。惜しまれつつ早世した伝説のコラムニストがいた│評価=◎おすすめ

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