角岡伸彦・西岡研介・家鋪渡・宝島「殉愛騒動」取材班★百田尚樹『殉愛』の真実
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え - 2015年05月29日 (金)

今回の問題はメディア業界における作家タブーの存在と、それに起因した異様な自粛、言論封殺であり、
大手週刊誌が1人の作家に完全敗北するというジャーナリズム史上最悪の言論事件だった。
巨大なカを持った1人の作家が、歪んだ権力を行使し、大メディアを沈黙させる――。
百田が好んで使うフレーズにならえば、「おぞましくておぞましくて」身の毛もよだつ言論封殺事件。それが「殉愛騒動」の本質なのだ。
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百田尚樹『殉愛』(2014年11月)の出版と同時に、亡くなったやしきたがじんと3番目の妻さくらの「愛」がテレビで宣伝され、他方ネット上で疑惑が噴出し、大騒動となった。
「取材時間は300時間以上。取材ノートは30冊以上。書きながら、こんなに泣いた本はない」、そして「本格的なノンフィクションである」と百田は自らツイッタ―に書いた。「小説・殉愛」としておけばよかったのに、「かつてない純愛ノンフィクション」と喧伝したため、バッシングがやまなかった。
このため虚偽記述に“事故本”とまで批判された。百田はツイッタ―で吼え続けていたが、半年たった今、次々現れる“真実”とさくら夫人の挙動にさじを投げ、さすがに騙されたと気づき、黙して語らなくなった。
当方は、コリア系日本人夫婦の“純愛”や“後妻業”の物語に何の興味もない。
当方が問題にしたいのは、「週刊文春」「週刊新潮」など出版社系週刊誌のだらしなさである。ベストセラー作家百田に全面降伏し媚を売り続けた。花田元文春編集長は「百田が生み出す利益を考えたら、出版社は批判しないのは当然」と古巣をかばい、自らの雑誌でも百田の代弁を誌面で行った。「週刊現代」「週刊ポスト」の黙殺も許せない。
これ以来、大宅壮一ノンフィクション賞に雑誌部門が設けられたことに疑問視をするようになったし、文春や新潮のスクープ大見出し広告にも胡散臭さを感じるようになった。
ところで以前、たかじんが亡くなったので“大阪の三悪人”の一人に百田尚樹を加えたいと書いたが、他の一人橋下徹が“大阪都構想”の住民投票に敗れ、政界引退を表明した。大阪には探してももう“小物”しかいなくなった。
なぜこれを話題にするかというと、本書の執筆者の角岡伸彦、西岡研介(松本創を加えた神戸新聞出身トリオで)は、大言壮語の百田などに構っておらず橋下徹を書いてもらいたい。佐野真一のような“血脈”ではなく、橋下が府庁、市役所で公金、公務を蹂躙し、大阪独自の文化やコミュニティを破壊したことを書いてほしい。放っておけば国政に進出しかねない。
ところで橋下が政界引退を表明した途端、地元の新聞、テレビは“べたほめ”に変わった。しかし退陣をいちばん喜んだのは、反対陣営や府市職員ではなく、橋下に翻弄され続けた大新聞の大阪本社の連中だろう。それほど大阪のメディアは情けなかった。
★百田尚樹『殉愛』の真実│角岡伸彦・西岡研介・家鋪渡・宝島「殉愛騒動」取材班│宝島社│ISBN:9784800237545│2015年03月│評価=◎おすすめ│ミリオンセラー作家・百田尚樹の「純愛ノンフィクション」、その疑惑とウソを徹底解明!
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