05/ビジネスという甘きもの│T版 2015年4月~8月
05/ビジネスという甘きもの - 2015年09月11日 (金)
05/ビジネスという甘きもの│T版 2015年4月~8月

**2015.04.01
★大内順子『お洒落の旅人』
彼[夫・宮内裕]にはクリエイターとしての類い稀なる素質があり、もしも生涯にわたりファッションデザインに携わっていたならば、ディオールやサンローランと肩を並べ歴史に残るデザイナーになっていたに違いないでしょう。★大内順子『お洒落の旅人』△2014
* *
『お洒落の旅人』は黒メガネのファッション・ジャーナリスト大内順子の自伝。夫・宮内裕は、デザイン画家、服飾デザイナー、マネキン製作、舞台衣装、装置デザイナーと変転。一筋であれば巨匠と夫の才能を惜しむ。「夜寝たら朝、目が覚めないのがいちばんいいわ」その通りに夫の誕生日に80歳で死去。
**2015.04.13
★野村進『千年企業の大逆転』
もし老舗企業が閉鎖的で固陋な“静”の組織であったなら、とっくに消え失せていたにちがいない。時の試練に耐え、いまなお繁栄をつづける老舗企業は、ほとんど例外なく、オープンで進取の気性に富む“動”の組織を築きあげている。★野村進『千年企業の大逆転』△2014
**
アジア取材が多い野村進は、中国の大気汚染、インドやフィリピンの貧富格差を見て、日本の老舗企業が育んできた価値観(仕事観・技術観・倫理観)こそ、アジアに発信できるものではないかと気づく。『千年、働いてきました』に続く、近江屋ロープ、ヤシマ工業、新田ゼラチン、テイボー、三笠産業という老舗ルポ。
**2015.04.20
★吉野次郎『なぜ2人のトップは自死を選んだのか――JR北海道、腐食の系譜』
正視するに耐えない社内から目をそらす方法が、自決だったのかもしれない。それは一世紀を超える鉄道史の中で、むしばまれる組織体を放置し続けた末路である。腐食は社内の奥深くまで進行していた。★吉野次郎『なぜ2人のトップは自死を選んだのか――JR北海道、腐食の系譜』△2014
**
『なぜ2人のトップは自死を選んだのか――JR北海道、腐食の系譜』△2014。今も重大事故が絶えない。2015年4月にも青函トンネル内で特急が発煙事故。労使対立が原因か。列車高速化や副業を重視し、補修費や人件費を抑える経営陣。ついには事故原因の隠蔽という現場の腐食。日経ビジネス記者吉野次郎がJR北海道の病巣を追う。
**2015.04.23
★中島岳志『下中弥三郎』
下中が出版社を立ち上げる際、「あかつき社、あけぼの社、希望社、純真社、天真社、愛人社、便利社」と悩んでいたところ、傍でそっと「平凡社はどう」とささやき、これが採用された。(妻の)みどりは、常に前のめりな下中に「平凡」という釘を刺したのである。★中島岳志『下中弥三郎』○2015
**
中島岳志『下中弥三郎-アジア主義から世界連邦運動へ』は、平凡社創業100周年記念出版。だが著者は、創業者の偉人伝や成功譚を書くつもりはない、下中は私にとって受け入れ難い人物である、と。陶工、代用教員、雑誌編集者、労働運動指導者、世界連邦運動など“厄介な怪物”の生涯を描く。
**2015.04.27
★朝日新聞社取材班『非情世界――恐るべき情報戦争の裏側』
「サイバー攻撃について情報を収集し、他国とも共有しなければ、他国の良い情報は得られない。情報は『寂しがり屋』であり、情報を持っている人、発信しようとする人に他の情報も集まっていく」(西本逸郎ラック専務理事)★朝日新聞社取材班『非情世界――恐るべき情報戦争の裏側』○2014
**
シリア、北朝鮮のインテリジェンスの容赦ない世界を描き、日本のインテリジェンスは大丈夫かと問う。とりわけ陸・海・空・宇宙空間に次ぐ“第5の戦場”サイバー空間。情報収集・分析システム「エシュロン」を共同運用する米国などの「ファイブ・アイズ」に興味深々。
**2015.05.18
★蔭山洋介『スピーチライター』
スピーチライターはただの受け身の代筆屋ではありません。政策やビジネスのプロフェッショナルとして、トップの一番近くにいてさまざまなアドバイスをしながら、スピーチを一緒に生み出していく仕事です。★蔭山洋介『スピーチライター』〇2015
**
オバマ大統領の「Yes we can」というキャッチフレーズは、当時26歳のアダム・フランケルによるもの。わが国でも首相がスピーチライターを多用するようになってきた。本書『スピーチライター』は、新社長就任のスピーチと、企業の新規事業の記者発表を例に、ライターの仕事やコミュニケーション戦略のノウハウについて説明する。化粧、ファッション、スピーチ、ますます“見た目”社会に。
**2015.06.12
★須田桃子『捏造の科学者――STAP細胞事件』
ある研究者は、[笹井氏の]小保方氏への遺言について、メールにこう記した。「足かせを一生かけたとしか思えません。はいたら踊り続けなくてはならない『赤い靴』ですね」★須田桃子『捏造の科学者――STAP細胞事件』◎2015
**
『捏造の科学者』は毎日新聞東京本社科学環境部記者によって、同社のチームによる取材をもとに、その一部始終を丁寧に記述したもの。科学記者として正確さと分かりやすさを心がけ、決してセンセーショナルなとらえ方はしない。事件は、笹井氏の自死、小保方氏の失脚により、収束した。そして神戸医療産業都市構想に暗雲が立ち込めた。
**2015.07.26
★こうやまのりお『みっくん、光のヴァイオリン』
その日、みっくんがヴァイオリンを演奏すると、佐村河内さんはヴァイオリンに手を当てながら、じっと目を閉じていました。そうすると楽器の震動が指から伝わって、音が聞こえるというのです。「すごい人だな〜」と、みっくんは改めて思いました。★こうやまのりお『みっくん、光のヴァイオリン』△2013
**
義手の少女ヴァイオリニストと聴覚障害の作曲家との“師弟愛”を描き、佐村河内守を絶賛した。上掲の嘘くさい場面を感動的に書きながら、神山典士は1年後、佐村河内は耳が聞こえ、作曲は新垣隆というゴーストライターがいたと、暴くことになる。
**2015.07.26
★神山典士『ペテン師と天才――佐村河内事件の全貌』
だが世間から見れば、私を含めたマスメディア全体が、ある意味で佐村河内の虚構づくりに加担した「共犯者」であることを忘れてはいけない。たとえそれが無自覚ではあっても、私たちは「障害者、被爆二世、クラシックの長大な交響曲」という3つの物語にやすやすと乗ってしまったのだ。それが「売れる」と思って。★神山典士『ペテン師と天才――佐村河内事件の全貌』〇2014
**
佐村河内ゴーストライター事件では「私を含めたマスメディア全体が共犯者」と白々しく書き、自著『みっくん、光のヴァイオリン』が絶版になったから自分も“被害者”と語る。少なくとも活字の世界では、マッチポンプの張本人は神山典士であろう。
**2015.07.26
★神山典士『ゴーストライター論』
私自身にしても、公に「ゴーストライティングをしています」と語ることはまずない。仮に誰かに聞かれたら、「著者と一緒に本をつくりました」とか「この本の『企画構成』を担当しました」と表現することが多いだろうか。私はここで改めて、この作業を「チームライティング」と呼んだらどうだろうと思っている。本書でも書いたが、著者とライターと編集者がチームを組んで新しい価値を紡ぎ、それを出版する。★神山典士『ゴーストライター論』△2015
**
佐村河内ゴーストライター事件を暴いた神山典士は、自ら50冊以上のゴースト本を手掛けてきたライター。「ゴーストライターがゴーストライティングの批判をしている」との批判を想定し、「チームライティング」論を展開。小説家が本業の小説を代作させればバツだが、スポーツ選手が口述で自伝を代作させればマル。と当方は考える。
**2015.08.05
★清武英利『切り捨てSONY』
〈工場を売り、ビルを売り、土地を売り、人を売り、今回ブランドまでもが売りに出されました。こういった会社は「何業」に分類されるんでしょうね。資産を売ってるわけだから不動産業ですか。なるほど〉★清武英利『切り捨てSONY』〇2015
**
創業者盛田昭夫は「学歴無用論」を唱えたが、東大卒の幹部社員が増殖するに従い、自由闊達なる社風が消え、やがて没落するSONY。資産切り売りと人員削減のリストラで目先の利益を追う出井伸之以降の米国型経営。キャリア開発室という追い出し部屋の技術者たちの矜持を描く。遺伝子は残るのか。
**2015.08.17
★開高健・島地勝彦『蘇生版水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』
「四番勝負」だけは、開高健先生抜きでわたしの独り芝居でやったことは、ジョークではなく真実である。(島地勝彦)★開高健・島地勝彦『蘇生版水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』△2015
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開高健にはジョーク集が2冊あって、『食卓を笑う』1982と『水の上を歩く?』1989。後者は古書店でも高価だったが、16年ぶりに復刊された。「サントリークオータリー」連載4回目に開高健がギブアップ、“架空対談”で島地が一人二役を演じたと、当時に編集者が本書でバラしている。時効?
**212.80.510
★原田マハ『モダン』
一年間の研修後、東京で新しい私立美術館の開設に関わることになっていた。世界一流の美術館のノウハウを学ぶために、新美術館を開発の目玉として計画している企業に学芸員として雇われた彼女は、その企業から派遣されていたのだ。その企業はMoMAに多額の寄付をしていた。その見返りに、MoMAは研修員の受け入れを認めたというわけだ。(「あえてよかった」)★原田マハ『モダン』△2015
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原田マハの『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』『太陽の棘』など美術を扱った小説を愛読。本書はニューヨーク近代美術館(MoMA)が舞台の短編集だが、9.11や3.11を盛り込んだ虚実ないまぜ小説は成功したとは言い難い。上掲で伊藤忠商事、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務という原田の経歴の意味が分かった。『モダン』というタイトルだが、実は『MoMA』としたかった魂胆がみえみえ。

**2015.04.01
★大内順子『お洒落の旅人』
彼[夫・宮内裕]にはクリエイターとしての類い稀なる素質があり、もしも生涯にわたりファッションデザインに携わっていたならば、ディオールやサンローランと肩を並べ歴史に残るデザイナーになっていたに違いないでしょう。★大内順子『お洒落の旅人』△2014
* *
『お洒落の旅人』は黒メガネのファッション・ジャーナリスト大内順子の自伝。夫・宮内裕は、デザイン画家、服飾デザイナー、マネキン製作、舞台衣装、装置デザイナーと変転。一筋であれば巨匠と夫の才能を惜しむ。「夜寝たら朝、目が覚めないのがいちばんいいわ」その通りに夫の誕生日に80歳で死去。
**2015.04.13
★野村進『千年企業の大逆転』
もし老舗企業が閉鎖的で固陋な“静”の組織であったなら、とっくに消え失せていたにちがいない。時の試練に耐え、いまなお繁栄をつづける老舗企業は、ほとんど例外なく、オープンで進取の気性に富む“動”の組織を築きあげている。★野村進『千年企業の大逆転』△2014
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アジア取材が多い野村進は、中国の大気汚染、インドやフィリピンの貧富格差を見て、日本の老舗企業が育んできた価値観(仕事観・技術観・倫理観)こそ、アジアに発信できるものではないかと気づく。『千年、働いてきました』に続く、近江屋ロープ、ヤシマ工業、新田ゼラチン、テイボー、三笠産業という老舗ルポ。
**2015.04.20
★吉野次郎『なぜ2人のトップは自死を選んだのか――JR北海道、腐食の系譜』
正視するに耐えない社内から目をそらす方法が、自決だったのかもしれない。それは一世紀を超える鉄道史の中で、むしばまれる組織体を放置し続けた末路である。腐食は社内の奥深くまで進行していた。★吉野次郎『なぜ2人のトップは自死を選んだのか――JR北海道、腐食の系譜』△2014
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『なぜ2人のトップは自死を選んだのか――JR北海道、腐食の系譜』△2014。今も重大事故が絶えない。2015年4月にも青函トンネル内で特急が発煙事故。労使対立が原因か。列車高速化や副業を重視し、補修費や人件費を抑える経営陣。ついには事故原因の隠蔽という現場の腐食。日経ビジネス記者吉野次郎がJR北海道の病巣を追う。
**2015.04.23
★中島岳志『下中弥三郎』
下中が出版社を立ち上げる際、「あかつき社、あけぼの社、希望社、純真社、天真社、愛人社、便利社」と悩んでいたところ、傍でそっと「平凡社はどう」とささやき、これが採用された。(妻の)みどりは、常に前のめりな下中に「平凡」という釘を刺したのである。★中島岳志『下中弥三郎』○2015
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中島岳志『下中弥三郎-アジア主義から世界連邦運動へ』は、平凡社創業100周年記念出版。だが著者は、創業者の偉人伝や成功譚を書くつもりはない、下中は私にとって受け入れ難い人物である、と。陶工、代用教員、雑誌編集者、労働運動指導者、世界連邦運動など“厄介な怪物”の生涯を描く。
**2015.04.27
★朝日新聞社取材班『非情世界――恐るべき情報戦争の裏側』
「サイバー攻撃について情報を収集し、他国とも共有しなければ、他国の良い情報は得られない。情報は『寂しがり屋』であり、情報を持っている人、発信しようとする人に他の情報も集まっていく」(西本逸郎ラック専務理事)★朝日新聞社取材班『非情世界――恐るべき情報戦争の裏側』○2014
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シリア、北朝鮮のインテリジェンスの容赦ない世界を描き、日本のインテリジェンスは大丈夫かと問う。とりわけ陸・海・空・宇宙空間に次ぐ“第5の戦場”サイバー空間。情報収集・分析システム「エシュロン」を共同運用する米国などの「ファイブ・アイズ」に興味深々。
**2015.05.18
★蔭山洋介『スピーチライター』
スピーチライターはただの受け身の代筆屋ではありません。政策やビジネスのプロフェッショナルとして、トップの一番近くにいてさまざまなアドバイスをしながら、スピーチを一緒に生み出していく仕事です。★蔭山洋介『スピーチライター』〇2015
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オバマ大統領の「Yes we can」というキャッチフレーズは、当時26歳のアダム・フランケルによるもの。わが国でも首相がスピーチライターを多用するようになってきた。本書『スピーチライター』は、新社長就任のスピーチと、企業の新規事業の記者発表を例に、ライターの仕事やコミュニケーション戦略のノウハウについて説明する。化粧、ファッション、スピーチ、ますます“見た目”社会に。
**2015.06.12
★須田桃子『捏造の科学者――STAP細胞事件』
ある研究者は、[笹井氏の]小保方氏への遺言について、メールにこう記した。「足かせを一生かけたとしか思えません。はいたら踊り続けなくてはならない『赤い靴』ですね」★須田桃子『捏造の科学者――STAP細胞事件』◎2015
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『捏造の科学者』は毎日新聞東京本社科学環境部記者によって、同社のチームによる取材をもとに、その一部始終を丁寧に記述したもの。科学記者として正確さと分かりやすさを心がけ、決してセンセーショナルなとらえ方はしない。事件は、笹井氏の自死、小保方氏の失脚により、収束した。そして神戸医療産業都市構想に暗雲が立ち込めた。
**2015.07.26
★こうやまのりお『みっくん、光のヴァイオリン』
その日、みっくんがヴァイオリンを演奏すると、佐村河内さんはヴァイオリンに手を当てながら、じっと目を閉じていました。そうすると楽器の震動が指から伝わって、音が聞こえるというのです。「すごい人だな〜」と、みっくんは改めて思いました。★こうやまのりお『みっくん、光のヴァイオリン』△2013
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義手の少女ヴァイオリニストと聴覚障害の作曲家との“師弟愛”を描き、佐村河内守を絶賛した。上掲の嘘くさい場面を感動的に書きながら、神山典士は1年後、佐村河内は耳が聞こえ、作曲は新垣隆というゴーストライターがいたと、暴くことになる。
**2015.07.26
★神山典士『ペテン師と天才――佐村河内事件の全貌』
だが世間から見れば、私を含めたマスメディア全体が、ある意味で佐村河内の虚構づくりに加担した「共犯者」であることを忘れてはいけない。たとえそれが無自覚ではあっても、私たちは「障害者、被爆二世、クラシックの長大な交響曲」という3つの物語にやすやすと乗ってしまったのだ。それが「売れる」と思って。★神山典士『ペテン師と天才――佐村河内事件の全貌』〇2014
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佐村河内ゴーストライター事件では「私を含めたマスメディア全体が共犯者」と白々しく書き、自著『みっくん、光のヴァイオリン』が絶版になったから自分も“被害者”と語る。少なくとも活字の世界では、マッチポンプの張本人は神山典士であろう。
**2015.07.26
★神山典士『ゴーストライター論』
私自身にしても、公に「ゴーストライティングをしています」と語ることはまずない。仮に誰かに聞かれたら、「著者と一緒に本をつくりました」とか「この本の『企画構成』を担当しました」と表現することが多いだろうか。私はここで改めて、この作業を「チームライティング」と呼んだらどうだろうと思っている。本書でも書いたが、著者とライターと編集者がチームを組んで新しい価値を紡ぎ、それを出版する。★神山典士『ゴーストライター論』△2015
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佐村河内ゴーストライター事件を暴いた神山典士は、自ら50冊以上のゴースト本を手掛けてきたライター。「ゴーストライターがゴーストライティングの批判をしている」との批判を想定し、「チームライティング」論を展開。小説家が本業の小説を代作させればバツだが、スポーツ選手が口述で自伝を代作させればマル。と当方は考える。
**2015.08.05
★清武英利『切り捨てSONY』
〈工場を売り、ビルを売り、土地を売り、人を売り、今回ブランドまでもが売りに出されました。こういった会社は「何業」に分類されるんでしょうね。資産を売ってるわけだから不動産業ですか。なるほど〉★清武英利『切り捨てSONY』〇2015
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創業者盛田昭夫は「学歴無用論」を唱えたが、東大卒の幹部社員が増殖するに従い、自由闊達なる社風が消え、やがて没落するSONY。資産切り売りと人員削減のリストラで目先の利益を追う出井伸之以降の米国型経営。キャリア開発室という追い出し部屋の技術者たちの矜持を描く。遺伝子は残るのか。
**2015.08.17
★開高健・島地勝彦『蘇生版水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』
「四番勝負」だけは、開高健先生抜きでわたしの独り芝居でやったことは、ジョークではなく真実である。(島地勝彦)★開高健・島地勝彦『蘇生版水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』△2015
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開高健にはジョーク集が2冊あって、『食卓を笑う』1982と『水の上を歩く?』1989。後者は古書店でも高価だったが、16年ぶりに復刊された。「サントリークオータリー」連載4回目に開高健がギブアップ、“架空対談”で島地が一人二役を演じたと、当時に編集者が本書でバラしている。時効?
**212.80.510
★原田マハ『モダン』
一年間の研修後、東京で新しい私立美術館の開設に関わることになっていた。世界一流の美術館のノウハウを学ぶために、新美術館を開発の目玉として計画している企業に学芸員として雇われた彼女は、その企業から派遣されていたのだ。その企業はMoMAに多額の寄付をしていた。その見返りに、MoMAは研修員の受け入れを認めたというわけだ。(「あえてよかった」)★原田マハ『モダン』△2015
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原田マハの『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』『太陽の棘』など美術を扱った小説を愛読。本書はニューヨーク近代美術館(MoMA)が舞台の短編集だが、9.11や3.11を盛り込んだ虚実ないまぜ小説は成功したとは言い難い。上掲で伊藤忠商事、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務という原田の経歴の意味が分かった。『モダン』というタイトルだが、実は『MoMA』としたかった魂胆がみえみえ。
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