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小沢信男★俳句世がたり 

20170508

2017.05.08俳句世がたり



葉桜やふとももはみな桜色   征夫

 五月は三社祭。葉桜のシーズンながら、くりだす女神輿の満開色のみごとさよ。


と謳いあげた右は、浅草生まれ向島育ち辻征夫の『貨物船句集』より。

 そもそも神輿は、御神体をお乗せしてお旅所をめぐるもの。男どもの奉仕でかつぐ。日本の寺社の祭事の習いでもともと女人禁制でした。子供神輿さえ男の児だけでかついだ。わが少年期には。


★俳句世がたり |小沢信男 |岩波新書 |2016年12月|ISBN: 9784004316343|○

 いつだったか、当方より年上の作家の本はもう読まない、と決めたことがあった。老齢となり、かつての作品を自らコピーしたような文章をだらだらと垂れ流したような本は、もういいと。ところが文庫本売り場の新刊をながめても、知った顔がないし、若い読者を対象としたものが多い。で、逆戻りすることにした。

 本書の著者小沢信男は1927年生まれ。ずいぶん年上である。『犯罪紳士録』(1980)、『悲願千人斬の女』(2004)、『東京骨灰紀行』(2009)を以前読んだ。プロの俳人ではないが、句集も出している方の「俳句鑑賞本」が当方は好きである。たとえば多田道太郎が「週刊新潮」に連載した『おひるね歳時記』(1993)。

 さて本書は、月刊「みすず」の表紙裏に2010~2016年に連載されたもの。風天こと渥美清、三菱重工爆破事件の死刑囚大道寺将司、伝説の鈴木しづ子、ホームレス川柳大濠藤太など、もちろん芭蕉、蕪村をはじめ多彩な顔触れである。
 
戦災や震災の句が多く取り上げられているが、ここでは祭りの句を紹介。

神田川祭の中をながれけり  万太郎
――(久保田万太郎の句は)蔵前の榊神社の祭りだそうですがせっかくの神田川だもの、天下の神田祭と思いたい。(本書)

祭笛吹くとき男佳かりける  多佳子
――ちかごろナサケないばかりのような男どもの一人として、こうホメられてわるい気はしません。(本書)

 さて上掲の辻征夫(1939~2000年)。著者たち旧友が集まって辻の実家の向島が見渡せる浅草のホテルで辻をしのぶ会を催したら、建設中の東京スカイツリーが見えた。

――地上350メートルと450メートルにできる展望台へ、誘えばたぶん、すぐにやってくるね辻征夫は。死んでるのも忘れるほどの物好きが、気のなさそうな顔つきでさ。そうしてわれら余人が気づかないなにかを、ヒョイとみつけるんだ。あったなぁ再々そんなことが。さてはスカイツリーがひらひら葉っぱを散らすとか。それよ!

落葉降る天に木立はなけれども  征夫


 引きたい句が多い本書だ。この辻征夫をふくめ「どうやら追悼録の一面があるではないか」と自ら書き、自句をそえて、こう締めくくる。

――おっつけこの身もあちらへ参る。その節はどこかでばったり、あの人この人とまためぐりあう。なんてことはあるわけないにせよ、まったくないともかぎらないぞ。これはたのしみだ。おいしいことは、なるべくさきへ延ばすとしましょう。

よみじへもまた落伍して除夜の鐘


小沢信男■ 悲願千人斬の女


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