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2017. 06. 06  
2017.06.06去就-隠蔽捜査



「方針をはっきり決めてくれないと困る。秘密樫に解決するなら、それなりの方法がある。また、世間に発表するなら、別のやり方もある」

「いずれにしろ、一社が嗅ぎつけたら、他社も気づく。
やつら、ゴキブリと同じだ。一匹いたら百匹、だ」


 刑事部長が、マスコミをゴキブリにたとえた、などということがどこかに洩れたら、けっこう大事になるだろう。

 発言者が、どういうニュアンスで言ったかなど、マスコミにとっては問題ではない。彼らは、言葉尻を捉え、前後関係を無視して、糾弾を始める。
 ヤクザの言いがかりや、クレーマーの苦情と同じだ。ジャーナリズムよりセンセーショナリズム。それが今の日本のマスコミの現状だ。

 竜崎は伊丹に言った。
「つまり、そのうちにマスコミが大挙して押し寄せてくるということだ。情報管理が必要だったが、それを怠ったということになる」



★去就 隠蔽捜査6 |今野 敏|新潮社|2016年7月|ISBN:9784103002581|○

 エド・マクベイ「87分署」シリーズやW.P.マッギヴァーン「悪徳警官」の昔から警察小説は大好きだが、今も佐々木譲の道警もの、今野敏「隠蔽捜査」シリーズは読んでいる。

 北方謙三があるインタビューで、小説の質が落ちている、テレビドラマみたいになっている、と発言していた記憶にある。「映画というのは、スクリーンに突如として息を飲むような映像が現れたりするわけよ。その非現実の美が瞬間的に現れるのが映画で、そのよさが小説にもあるべきだと思ってるんだけど、最近は物語を追った小説が多くて」云々。

 たしかに佐々木譲は冒険小説のころの文体と著しく変わり、セリフとト書きを読んでいるようなそっけなさがある。今野敏『去就 隠蔽捜査6』も同様で1時間もあれば読み終わる。季節の挨拶から始める当方のメールと、「り」という一語だけの孫の返信との差かなと思う。上掲の場面でも、地の文と主人公のセリフとの違いが分からない。

 それはともかく、隠蔽捜査シリーズは2005年以来、長短あわせ本書『去就』で8冊目である。今回はストーカーがテーマだが、竜崎伸也大森署長、伊丹俊太郎警視庁刑事部長に加え、新たにノンキャリアの弓削篤郎方面部長が登場したものの、ややマンネリか。

 そこで提案したいのが、次作は菅義偉“隠蔽”官房長官をモデルにしたらいかがかと。上掲の「やつら、ゴキブリと同じだ。一匹いたら百匹、だ」に似たセリフを菅“隠蔽”長官はオフレコでしゃべっているのでははないか。

 さて安倍晋三首相追及は、森友学園問題から加計学園問題に移行している。当方は、当初、園児たちの「安倍晋三内閣総理大臣を、一生懸命支えていらっしゃる昭恵夫人、本当にありがとうございます。安保法制国会通過よかったです」の唱和の映像に鳥肌が立った。

 が、森友問題は、①家庭内野党とかリベラルな考えをもつという安倍“アキレ”夫人の“印象操作”が剥がれ、卑しい似たもの夫婦、単なる晋三のコピーだったと分かったこと、②官邸を牛耳っている経産省出身の今井尚哉首相秘書官などに対し、失地回復に必死の財務省官僚の“忖度”右往左往を目の当たりにしたこと、が成果だった。

 加計学園問題では、①いまどき珍しく地盤、看板、鞄なき政治家として、ついには内閣官房長官最長記録を更新中という菅義偉官房長官が、馬脚を現わし下卑た男だと分かったこと。②安倍首相が“お友達ずぶずぶ隠蔽”論点ずらし答弁の醜態を万人の目にさらしたこと、が成果だった。

 菅“隠蔽”長官のセリフ。「その指摘は全くあたらない。粛々と進める方針は、いささかも揺らぐことはない」。二の句が継げない、対話を拒否する答弁である。しかも前川喜平前文部科学省事務次官への誹謗は、手を変え品を変え下品な個人攻撃に終始する。「教育行政のトップが出会い系バーに行き小遣いまで与えていたことに、国民のみなさんもそうでしょうが極めて違和感を感ずる」と下品な薄ら笑いを浮かべながらの発言。当方はかねがね安倍よりも菅を攻めよと思ってきたが、ここへきてメディアの一部は、菅“隠蔽”長官の卑しい品性に気づきはじめたようだ。

 その前川喜平前事務次官はどこか「隠蔽捜査」の竜崎伸也を思い起こさせるところがある。警察庁出身の杉田和博官房副長官は、前川前次官が現職の時に出会い系への出入りを注意したという。私生活まで監視していたらしい。また“官邸御用達”ジャーナリスト山口敬之が準強姦容疑で逮捕される寸前だったのを、菅義偉官房長官の右腕といわれるエリート警察官僚中村格刑事部長(現警察庁組織犯罪対策部長)が捜査にストップをかけていたというのも、サイドストリーとして盛り込んでもらいたい。ついでに読売新聞の卑しい品性の記者も登場させるのもいい。

 それにしても“姑息な安倍”は、野党の追及に“印象操作”だと反論しているが、みずからの“隠蔽操作”の間違いではないか。お友達は胡散臭い連中ばかり。落選中は加計学園に養ってもらっていた萩生田光一副長官。「総理は自分の口から言えないから、私が代わって」とねじ込んだ和泉洋人首相補佐官。文科省OB・加計学園理事・内閣官房参与の“三つ股”木曽功。それらが官邸内を闊歩している。

 今野敏さま。『隠蔽捜査』次回作は、ぜひ“卑しい”菅義偉“隠蔽”長官を敵役に、竜崎伸也署長が一矢報いる物語で、読者をすかっとさせてください。



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