元木昌彦 ★現代の“見えざる手”――19の闇…………☆メディアが今しなければならないことは。

20170728

2017.07.28現代の見えざる手


  国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)が発表した昨年の「報道の自由度ランキング」では、日本は対象の180カ国・地域のうち、前年より順位が11下がって72位だった。
 NGOは「日本の多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」と指摘している。

私は以前から、日本には「いいっ放し」の自由はあるが、真の意味での「言論の自由」はないといってきた。

なぜなら、言論の自由も、民主主義も、自分たちで勝ち取った権利ではないから、言論の自由のようなもの、民主主義のようなものがあれば国民は満足してしまうからである。
〔…〕

 ジャーナリストとして守るべきことは「権力側、攻める側にカメラを据えるな」という姿勢を崩さないことであるはずだが、そうしたイロハのイもわからないメディア人間ばかりになってきたと思わざるを得ない。

――まえがき 元木昌彦


★現代の“見えざる手”――19の闇|元木昌彦 |人間の科学新社|2017年05月 |ISBN:9784822603281 |○

 元木昌彦(1945~)といえばウエブ・マガジン「日刊サイゾー」の「元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』」を毎週読んでいる。難点をいえばだらだら長文であること(ネット上では紙の新聞・雑誌と違い字数が厳格でないので、この連載に限らないが)、また編集部の要請だろうが「巻末付録」があって若い女性や熟女のグラビア、袋とじの紹介までしていること(そういえば“ヘアヌード”という言葉を創った人だった)。

 年を取ればこうなるのかと、ちょっと残念な気がしていた。が、本書を手にとって、ビジネス情報誌「エルネオス」で「メディアを考える旅」1996年から始め20年以上にわたり230人以上の人にインタビューをしていたことを知った。さすが“生涯編集長”である。本書はそのうち19人を登場させたもの。

 以下、本書から「メディアの劣化に歯止めをかけ、今メディアがしなければいけない大切なことは何かを考えてきた」ゲストの発言を抜粋する。ゲストは生年月順に並べ替えた。

◆「共生経済」で作る新しい社会――内橋克人(1932~)
 例えば、ネットで情報を見るというのも、そういうものに振り回されないためでなければなりません。過去に書かれたものはもちろん勉強します。それは同じことを言わないために学ぶわけです。そして、自分でなければ言えないことを言う。私の場合は、戦争で私の身代わりになって死んでいった人から預かった魂のためにも、きちんと書いていこうと。だから、ウォーニングを発することをやめるわけにはいかないのです。

◆“規制の虜”が起こした人災――福島原発事故――黒川清(1936~)
 ジャーナリストは自分で精査し、個人としてどう考えるのかを発表して問題提起するべきなのに、あなたの意見はどうですかと私に聞いてくるだけ。委員長が参考人の答弁をこのように批判したと書けば、自分の責任にならないからなのです。上が皆そうだったから真似しているだけですよ。日本のジャーナリストは基本的な姿勢を教育、訓練されていない。だから問題を自分のこととして考えたり、どう行動したらいいのかが分からない。

◆アメリカがすがるワラ――安倍首相 ――内田樹(1950~)
 別に今起きていることについて「だから、こうしろ」と対案や運動方針を出せと言っているわけじゃない。「現実はこうですよ」と客観的に提示してほしいだけなんです。それが本来のメディアの仕事でしょう。でも、今の日本のメディアは現実を隠蔽して、政府広報的な「ファンタジー」を広めることを仕事だと思っている。〔…〕
 メディア凋落の最大の原因は、マスメディアに関わっている人たちの質が落ちたことです。〔…〕メディアの未来より自分の出世を考えて、権力に尻尾を振るような人間ばかりがキャリアの階梯を上り、メディアの上層を占めるようになったというだけのことです。別にジャーナリズムが政府に強権的に支配されているわけじゃない。

◆ニッポンの「貧困大国」化を止められるか――堤未果(1972?~)
 活字メディアがまだ映像メディアに上書きされていない。活字というのは映像と違って、一方的な受け身の情報ではないし、出版の世界にはまだ多様性が生きている。〔…〕ネット世代は大手メディアを鵜呑みにしなくなってきていますし、憲法というのは日常とは遠いかもしれないけれど、確実に崩れてきていることを意識している人も多い。おそらく思っている以上に危機感があると思います。メディアが一番危機感がないのではないでしょうか。

◆鳩山辞任劇と原発事故――“永続敗戦”レジーム――白井聡(1977~)
 メディアを劣化させる要素は大きく言って二つあって、一つは内部の人間の劣化。〔…〕テレビも含めた大手メディアの社長が、料亭で総理と一緒に飯を食っているなんて、あれはもう論外中の論外ですよ。そういう行動様式をとる人間が出世するような組織にすぎないのですよ。もう一つは兵糧攻めです。メディアに対する一番有効な胴喝は、空気を読んだ財界が、政権が気に入らないと思っているであろうメディアから広告を引き揚げることです。だからメディアの腐敗と言う時には、同時に財界の腐敗も言わなければいけないのです。

◆安倍首相の“駄々っ子議論”を読み解く――木村草太(1980~)
 国会議員が何か言ってきた時には、まず「放送法三条に基づくところでは権限がないと介入できないはずですが、これはいったい何法何条に基づく手続きなんですか」とメディア側は言えなければいけません。〔…〕メディアに権力が介入してくることがいかに許されてはいけないことかについては、マスメディア側の意識が低いため、そこに付け入られています。

◆高齢化と生活費で下流老人になる‼!――救貧から防貧へ――藤田孝典(1982~)
 メディア自体、市民レベルの目線から離れつつあるように思います。〔…〕地道にじっくり時間をかけて、貧困の実態を追うというのはメディアの取材体制からみても構造的にも無理になっているように思います。〔…〕若い世代の記者さんは、子供の時から努力してきて大学へ入り、さらに就職試験の難関を突破して新聞社に入ってきた方が多いですから、努力したら報われる、そういう努力至上主義の人が多い。

なお、ノンフィクションに関して引用する機会があるかもしれないので、藤田孝典へのインタビュー(2015.10)の中での元木昌彦の以下の発言を記録にとどめておきたい。

 ――私の周りには私と同年代の高齢ノンフィクション・ライターがいっぱいいます。若い時は原稿料は安いけど働く雑誌はたくさんありました。〔…〕特にノンフィクションは取材費や資料代がかかります。しかも、ノンフィクションを載せる雑誌も次々に潰れ、出版社も売れないから単行本も出したがらない。

そういうライターでも、奥さんが働いているうちは何とかなるけど、年を取って働けなくなるとあっという間に下流老人になってしまう。大きな賞である大宅壮一ノンフィクション賞をとったノンフィクション・ライターでも苦しい生活をしている人が多くて、地方にいて東京に出てくる電車賃がないという人もいます。病気をして奥さんが救急車を呼んだけど「カネがないから入院しない」と救急車を返してしまった先輩ライターもいる。
 皆でカンパをしたりしてはいますが、プライドだけは高くて(苦笑)。


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