勢古浩爾★ひとりぼっちの辞典…………☆「ひとり」の自立? やかましいわ。知らんけど……。

20170730

2017.07.30ひとりぼっちの辞典


友だち ①いたほうがいいが、いなくても十分生きていける。②心理的負担になるような者は、友だちでもなんでもない。③水増しして「友だち」の数を増やしても無意味。〔…〕

 友人関係をつづけるために、無理や我慢をするつもりもない。男であれ女であれ、何事かがあれば(世間的にはつまらないことでも)、わたしはいつでも関係を切ることができる。

 喜んでそうするわけではない。その結果、極端に友たちの少ない人間になってしまった。しかしそのことを「悲惨」だとは思わない。

 人は友だちがいなくても当然、生きていける。

友だちはいらないというのではない。いなくてもかまわない。
〔…〕

 時折、わたしは“友だち甲斐”のない偏狭なやつかもしれないと思うことがある。


★ひとりぼっちの辞典|勢古浩爾|清流出版|2017年5月|ISBN:9784860294625|○

 著者勢古浩爾は、1947年生れ。34年間のサラリーマン生活ののち、執筆業。

「ひとりぼっち」をテーマとした辞書形式のエッセイ。「本書は『ひとり』の自立に関する本である。しかし『ひとり』であることを勧めているわけではない」とある。

 当方、年齢が近いので、共感できるところが多い。たとえば、……。

公園 ①定年になったひとり者は、気に入った静かな公園をひとつは確保したいもの。②河岸、散歩道、寺などでもいいが、べンチはあったほうがいい。③もしそこで話し相手ができそうになったら、別の場所を探す。

 定年後にほぼ毎日通っていた公園で、「話し相手もなく、ここ以外に行くところもないんだろうな」と思ったのか、話しかけてくる人ができた。ありがた迷惑とはこのことだ、とその公園に行かなくなったと。
 じつは当方も遺跡公園、博物館広場、であい公園、北公園と約200メートル続く地に毎朝行っている。公園まで往復1時間、ベンチで読書1時間という日課である。ところがときどき話しかけてくる人がいる。たいていは見知らぬ当方に、自慢話をひとしきりする高齢者である。迷惑千万。

 また著者は公園について「前は全然平気だった夏の陽射しがきつく、冬の寒さも身に堪えるようになった」とも書いていて、「いまの生活のなかで、一番愉しいことはなにか。わたしの場合、一番は、ない。ないことにしている。二番目は、客の少ない広い喫茶店で」云々と記す。


趣味 ①人生は暇つぶしだということを証拠立てる極私的な暇つぶしの行為。②「なにもしたくない病」と自嘲するが、ほんとうをいえば、それはそれで愉しい。

 毎年、同期が30人近く集まる。参加しなければ半生を否定することになる、死ぬまで参加、と決めていた集まり。だが、昨年たまたま体調を崩していたせいで、話題についていけなかった。
 同期の顔を思い浮かべながら、その日常を記すと、ジョギング、マラソン、ゴルフ、釣り、ダンス、カメラ、家庭菜園、陶芸、油絵、海外旅行、支援学校や図書館のボランティア、民生委員、会社役員など。

 みんながそれを話題に“忙しい”と自慢するのである。60代の“病気自慢”が70代では“多忙自慢”になった。著者と同じく当方は「いまでは、なにもしたくないからなにもしないという一番いい状態なのである」。「だらっとしています」は蔑視されるので、今年から参加をやめた。

 本書でいちばん気になったのは上掲の「友だち」の項。当方も“友だち甲斐”のない偏狭なやつ、なのだと思う。

 数少ない友人が、幼なじみも、級友も、職場の同僚も、いまはめったに会わないその“親友”たちが、どんどん死んでいく。もっと会っておけばよかった、と思う。今も会いたい。
 生涯の友と思っていた男が亡くなったとき、その遺族から知らせがなく、偶然死を知って通夜に行ったが、そこにいた数人の顔ぶれを見てなぜ当方には知らせがなかったのかと強いショックを受けた。
 当方はエンディング・ノートに「家族葬」と記すつもりだが、友人にはどう知らすべきか悩ましい。

 もう一つ、本書から。

やかましいわ ①相手の余計な一言を半分は受け入れながらも、冗句めかしてはねつける言葉の一撃。②「なんでやねん」「どないやねん」「知らんがな」と並ぶ、他に類例のない関西弁秀逸語のひとつ。

 この言葉の説明に、孤独死、老後破綻、無縁社会、下流老人、老人漂流社会などをあげ、「全部余計で、やかましい言葉ばかり」と書いている。ちょっと違うのではないか、著者は大阪人ではないな、と思っていたら、そのあとで、「やかましいわ」の次元が違っていた、「忘れてください」と書いている。その通りである。「やかましいわ」は、当方の隣町出身の芸人陣内智則の口癖だが、例にあげるとすれば、本書の以下の部分である。

哀愁 ①人生の悲しみに耐えている「ひとり」の男(「ひとり」の女)の現実の姿に、滲みでる悲しみの幻像が二重に映る。②薄暮。叶わぬ恋。人間は悲しい、と思う瞬間。ヨーロッパの石造りの街に降る雨。困ったような笑み。寡黙。薄暗い電球。深く刻まれた顔のシワ。農家の縁側に無言のまま座る老人。

 この饒舌が、やかましいわ。
「やかましいわ」のあとに「知らんけど……」とぼそっと呟くのが、いい使い方。

関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント
プロフィール

koberandom

Author:koberandom

1冊の本の中で「気になるフレーズ」を見つけることが“書評”である、と。



http://koberandom.o.oo7.jp/a-kensaku/index-zen-sakuin.html

Azensakuin_3

最新記事
カテゴリ
平成引用句辞典2013.02~
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR

Pagetop