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嵐山光三郎★芭蕉という修羅 …………☆芭蕉が、ふてぶてしく肩をゆすって修羅の荒野をめざしていく。

20170824

20170824芭蕉という修羅


 杉風(さんぷう)は姓名は杉山元雅、鯉屋の三代目で深川の伊奈代官家の敷地内に二つの庵を持ち、ひとつは採荼庵(さいたあん)、もうひとつが芭蕉庵である。生涯にわたって芭蕉を援助し、温厚篤実で情が深い。〔…〕

 芭蕉が伊奈代官家の諜報組織にいたとする説は光田和伸著『芭蕉めざめる』にある。光田氏とは2006年に姫路で芭蕉について講演をしたときにはじめて会った。

 そのとき、素堂の庵は深川芭蕉庵近くにあり、大規模な土木工事によって治水を完成させた伊奈代官家は幕府領の関東一帯の水利を仕切っていた、という話をした。

 伊奈代官家は藤堂家と親しく、御用屋敷のなかに幕府隠密養成所を作り、儒者である素堂は代官養成課程の教官で

芭蕉も同じく代官養成所で俳譜を教えていたのではないかと光田氏は推理した。その論は説得力があった。
〔…〕

 光田氏の『芭蕉めざめる』は2008年に刊行されて注目をあびた。

 山口信章こと素堂は55歳のときに甲州の笛吹川支流濁川の氾濫を治めるため、堤防工事総監督として出向いたことが知られている。〔…〕光田氏は、工事にかかわったのは、かつて伊奈代官家にいた素堂の教え子であったろう、と推察している。教え子が工事に協力したから素堂は難工事をなしとげられた。


★芭蕉という修羅 |嵐山光三郎 |新潮社|2017年4月|ISBN: 9784103601067|○

 嵐山光三郎の芭蕉を扱った本は、本書『芭蕉という修羅』をはじめ『悪党芭蕉』(2006)『芭蕉の誘惑』(2000、のち『芭蕉紀行』に改題) 『奥の細道温泉紀行』(1999) がある。
 また光田和伸には上掲の『芭蕉めざめる』(2008)のほか『芭蕉と旅する「奥の細道」』(2013)がある。
 あえていえば、小説家嵐山は“男色説”を、学者光田は“隠密説”を強調する。

 じつは当方、光田和伸先生の芭蕉講座を受講中である。姫路文学館において2015年から年10回×2時間の連続講座が行われている。当方、2016年に知り、奥の細道越後路から現在「軽み」まで受講中。駄句と思っていた句が先生の説明によってたちまち輝きだす。この講座は来年3月まで続く。

 「初時雨猿も小蓑を欲しげなり」の句を例にとる。

 ――山中で時雨にぬれた猿に出会った芭蕉は、「猿よ、おまえも蓑がほしいのだろう」と思いやった。時雨に濡れそぼった猿の姿に、芭蕉は自分を見ている。(嵐山『悪党芭蕉』)

 と嵐山は通説の「小猿が濡れながらしょんぼり寒げなので、きみも蓑がほしいのかと、憐れみでよびかけた」がそれは自身の姿でもある、とした。

 井本農一『芭蕉入門』によれば、「猿も、猿なりの小さい蓑を着てこのおもしろい初時雨の中を歩いてみたそうな様子であることよ」と“初時雨”を古来からの優雅で興あることとする。
 小西甚一『俳句の世界』でも、「お前もこの初時雨をめで、蓑でもきて濡れてみたいといった顔だね」と能勢朝次の“初時雨優雅”説を紹介する。

 そして光田は“初時雨”にあうと芭蕉はうきうきするという。「大好きな初時雨のなかの颯爽とした旅姿。私たちもあなたに倣ってちょっと蓑を借りたいなあ」と解する。「小蓑」は「小さな蓑」ではなく、「小耳にはさむ」と同様に「ちょっと」とか「少しの間、蓑を」いう意味だとする。

たしかに芭蕉には、「旅人と我名よばれん初しぐれ」「初時雨初の字を我時雨哉」がある。わびしいというイメージと正反対のものだ。

 芭蕉は、元禄7(1694)年に亡くなるが、「奥の細道」のあとは西日本を行脚する予定だった。
 光田は元禄3年の荷兮(かけい)への手紙に「四国の山ふみ つくしの船路、いまだこころさだめず候」とあり、まず四国へと言う。嵐山は、「去来の故郷である長崎をめざしていた」。そのため長崎の通事泥足(でいそく)と親しくしておく必要があったとして元禄7年大坂での歌仙興行で泥足に会ったと言う。
 
 100人が100人とも違う解釈をする、それが俳句の楽しさだ。そして100人の芭蕉がいる。本書の最終章、嵐山の筆は史実を追いながらも奔放に芭蕉を動かし自在である。

――芭蕉の発句は、
此道や行人なしに秋の暮
であった。晩秋の日暮れを、密命をうけた俳諧師が歩いていく。俳諧は危険な文芸で、芭蕉の本能は都市をめざす。欲に目がくらみ、身を破滅させてしまうほどの功が芭蕉をひきよせる。日々旅を栖(すみか)とする芭蕉が、ふてぶてしく肩をゆすって修羅の荒野をめざしていく。
(本書)

嵐山光三郎■ 悪党芭蕉
光田和伸□芭蕉めざめる




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