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金 香清★朴槿恵 心を操られた大統領 …………☆“秘線”たちがつくった「朴槿恵システム」の崩壊

20170826

2017.08.26朴槿恵心を操られた大統領


 実は、朴槿恵も崔順実のように文章を区切らず、「これ」「それ」といったあいまいな言葉を乱用し、脈絡なく話すことで知られていた。

 2017年1月2日、彼女は弾劾訴追後に記者たちを集めて、懇談会を開いている。朴槿恵大統領にしては珍しいサービス精神に思えるが、国民から激しく糾弾されていたこともあり、記者たちに本音を聞いてほしかったのだろう。

 ところが、大統領の肉声を聞くため集まった多数の記者たちは戸惑った。

その日はいつもの会見と違って原稿がないからか、話に脈絡がない上に、「そこ」「これ」など代名詞が多くて、大統領が何を言いたいのか理解しにくかったからだ。


 <しかしこうやって、ほかのなんていうか、報道というか噂、話、どこかの放送に出たのを見ると、あまりに多くの歪曲、誤報、そこに虚偽がそのまま乱発されて、それで思い通りにならないように、どこからどこまでが事実なのか、

また見ると「それも事実でなかった」、少し経つと「いや、これも事実でなかった」という風に言って広報室で:、こうやっていては終わりがないと、それで青瓦台ホームページに誤報を正しますとしてやって、

やったのにそれも全部はできなくて、いまあることだけでも数十あるし、おそらくすべて合わせると数え切れないほど多いでしょう>


★朴槿恵 心を操られた大統領 |金香清 |文藝春秋|2017年4月|ISBN: 9784163906157|○

 朴槿恵(パク・クネ、1952~ )は、2013年2月、大統領に就任したが、セウォル号事件への対応不備や崔順実(チェ・スンシル、1956~)ゲート事件など一連の不祥事により、2017年3月大統領弾劾で罷免された。現在はソウル拘置所、12㎡の特別独房に収監されている。薄緑色の服を着、番号「503」で呼ばれている。

 さて、上掲は青瓦台の常春斎という建物内での大統領懇談会。日付が2017年1月2日となっているが、中央日報日本語版によれば1月1日。記者団にあいさつをした後、一人一人に握手をした。43分間続いた懇談会で、朴大統領は「徹底的な自己防御」をした。

 崔順実被告について「数十年来の知人だが、だからといって知人がすべてをするわけがない。大統領の責務と判断があるのに、どうやって知人がすべてを行うのか」と語った。自らを「操り人形」などと言われているのを念頭に置いた発言である。

 予告なしの「報道前提」の懇談会だった。にもかかわらず自由な取材は認めなかった。ノートを持って懇談会場に入ることも、音声を録音することも許可しなかった。

 それなのになぜ上掲の朴槿恵の発言の一部が一言一句まで紹介されているのか疑問だが……。

 当方つねづね疑問に思っていたことが二つある。

 第1は、大統領への報告はメールやファクスによる「書面報告」がほとんどだという。そして大統領は側近や閣僚らの多くとの意思疎通ができない“不通(プルトン)大統領”だと批判されたりする。
 では、対面で会話せず、表情、態度を見ず、「書面報告」のみで内政、外交の判断をする“朴槿恵政策決定システム”はなぜ生まれたのか。

 それはまず青瓦台(チョンワデ)の物理的条件。青瓦台本館は、15万枚の青い瓦の2階建て。大統領の接見室・執務室・会議室など執務機能が集中する建物。秘書棟は、3棟ありスタッフの執務室。官邸は、大統領とその家族の住まい。それぞれに大統領執務室がある。
 
 大統領は住まいである官邸から本館へ行き、会見、会議など公式日程をこなすが、そのほかはほとんど官邸にいて、食事も一人でとるという。

 部下からの報告には、必要に応じ電話で問い合わせたりした。政治は、大統領、官僚、秘書=参謀のトライアングルで行われる。王朝時代の宦官のような秘書は約700人いるが、朴槿恵の議員時代からの「ドアノブ3人組」という3人の秘書官のみが大統領と直接、対面できた。ほかの秘書らに情報を遮断するとともに、国会議員も直接大統領に面談できなかった。

 このシステムをつくったのが、鄭潤会(チョン・ユンフェ)である(後述)。

 第2に、“秘線”という密かな線路の向うにいる影の人物(本書では「黒幕」としている)は、なぜ朴槿恵を操ることができたのか。

 朴槿恵の自叙伝『絶望は私を鍛え、希望は私を動かす』(大統領就任以前の2007年刊行)を“秘線”崔一家の記述を探して、読み直してみた。 
 
 79年朴正煕大統領暗殺され、全斗煥政権になると、新しい権力に取り入ろうとする人びとによって朴正煕の名誉は、嘘や推測、非難一色で罵倒され歪曲され傷つけられる。側近たちさえ、冷たく心変わりしていく。その失意のどん底にいた朴槿恵に崔一家が入り込む。そして88年に父・朴正煕の追慕事業で旧セマウム奉仕団の崔一家のみが「冬に初めて松の青さを知る」という言葉のように協力してくれたとの記述がある。

 朴槿恵にとっての秘線とは、崔太敏という大韓救国宣教団(のちの「セマウム奉仕団」)を設立した牧師であり、その娘、崔順実であり、娘の夫であった鄭潤会である。

崔太敏(チェ・テミン、1912~1994)は、74年朴正煕大統領の夫人・陸英修が暗殺された後に娘・朴槿恵に接触し、陸の霊の話をして「洗脳」し、当時23歳の朴槿恵を教団の名誉総裁にする。そして朴正煕の青瓦台を自由に出入りしていた。朴正煕大統領が79年に暗殺された後、いずれ朴槿恵を大統領にするべく動くが、94年に死去。

 鄭潤会(チョン・ユンフェ、1955~)は、崔太敏の秘書であったが、95年、その娘・崔順実と結婚する。98年朴槿恵が国会議員に出馬時から秘書のトップとして07年まで仕え、14年セウォル号事件時もずっと“秘線”であり続けた。「あの方が最初に政治家になった時から一緒に働いてきた。あの方の精神的な苦痛を横で黙って見ながら『死んでもいい』という覚悟で仕えた」(本人)。

 崔順実(チェ・スンシル、1956~)は、「セマウム奉仕団」で朴槿恵と知りあう。06年朴槿恵がテロの遭ったとき、病院で家族のように看護した。朴政権発足時から大統領並みの待遇を受け、検問もなしに青瓦台に出入りした。文化・体育事業などのミル財団、Kスポーツ財団を設立し、財閥から金を吸い上げるシステムをつくるなど、さまざまな利権に介入し私腹を肥やす。

 この3人が朴槿恵を“洗脳”し、操縦していた。

 さて、14年4月に発生し295人が死亡した旅客船セウォル号の沈没事故で、当日の朴槿恵大統領の動静がはっきりしていない、いわゆる「空白の7時間」をめぐる疑惑が生じた。

 事故が起きたのは朝の9時頃。韓国中の国民がテレビの画面を固唾をのみながら見守っていた。10時頃、大統領は書面で初めて報告を受けてから、午後5時過ぎに対策本部に姿を現すまでの7時間、乗客を救出できず時間を追うごとに船が沈んでいく様子が生放送されていた。朴大統領はこの日、21回(国家安保室10回、秘書室11回)の報告を受けたが、書面と電話だけで、対面での報告も、大統領主宰の会議もなかったという。

 この空白の7時間に大統領は鄭潤会(チョン・ユンフェ)と密会していたと一部メディアが報じた(孫引きした産経ソウル支局長が名誉棄損で起訴された、のちに無罪)。この直後、鄭潤会と崔順実とは離婚する。 彼は自分が朴槿恵から信頼されていることに、妻の桂順実が嫉妬したからだと離婚の理由を話す。

 以後崔順実は金を吸い上げるだけでなく、鄭潤会という“司令塔”に代わり政治そのものに介入する。毎日、青瓦台から30センチほどの厚みのある大統領の演説草稿や閣議での発言、政府高官の人事案などの報告資料を受け取りチェックする。多くの政府関係者が訪れ、大統領のスケジュールや国の政策について話しあっていたという。崔順実のタブレットに大統領の演説文が保有されていたし、20もの借名携帯電話を使い分け、朴槿恵とのおびただしい通話記録も残されていた。

 ――果たして彼女には本当に黒幕たる能力があるのだろうか。脈絡のない話し方、緻密さに欠けた行動、リーダーシップの欠如、わがままで周囲を振り回し、組織を恐怖心でまとめようとする発想。どれをとっても稚拙としか言いようのない資質ばかりが目立つ。(本書)

 また、「ドアノブ3人組」は崔順実との通話記録を録音していた。「脈絡がなく話すので、一度では内容を聞き取れなかった」からである。上掲の朴槿恵大統領の会話と同様に二人は思っていることを、正確に伝わるように言語化できないのだ。こうして多くの“証拠”を残し墓穴を掘った。

 朴槿恵という最高権力を崔順実は離婚後「独り占め」した。鄭潤会という司令塔を失って、政策はブレ、場当たり的で迷走する。

 こうして16年10月末に発覚した「崔順実ゲート事件」は、TV朝鮮、ハンギョレ、JTBCなどのスクープ報道等により、朴槿恵大統領を追い込んだ。

著者金香清(キム・ヒャンチョン)はフリーランスのライター、翻訳者。著者の韓国への取材によってメディアでの騒がれ方がよく分かった。なおこの一文は本書と中央日報日本語版などを参考に“朴槿恵備忘録”としてまとめてみた。

朴槿恵★絶望は私を鍛え、希望は私を動かす


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