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神保哲生★P C遠隔操作事件…………☆事件の展開から動機の解明、司法制度の課題まで、すべてを網羅した“完全版”ノンフィクション。

20170829

2017.08.29PC遠隔操作事件


件名:【遠隔操作事件】私が真犯人です

■私の目的
「犯行予告で世間を騒がすこと」
「無実の人を陥れて陰でほくそ笑むこと」
などではなく、
「警察・検察を掠めてやりたかった、醜態を晒させたかった」という動機が100%です。
なので、ある程度のタイミングで誰かにこの告白を送って、捕まった人たちを助けるつもりでした。〔…〕

■警察・検察の方へ  あそんでくれてありがとう。
今回はこのぐらいにしておくけれど、またいつかあそびましょうねーーー

いずれの件でも、本当に凶行に及ぶつもりはありませんでしたのでご安心ください。


――日付:2012年10月9日


★P C遠隔操作事件 |神保哲生 |光文社|2017年5月|ISBN:9784334979058|◎=おすすめ

パソコン遠隔操作事件は、2012年の6月から9月にかけて、インターネットの電子掲示板を介して、他者のパソコン(PC)を遠隔操作し、襲撃や殺人などの犯罪予告を行ったサイバー犯罪事件。逮捕者は次の通り。

① 6月29日の横浜市A小学校襲撃予告事件。杉並区未成年男性を7月1日威力業務妨害で逮捕。自供。

② 7月29日の大阪オタロード無差別殺人予告事件、および8月1日JAL006便爆破予告事件。吹田市男性を8月26日偽計業務妨害、航空機運行阻害で逮捕。

③ 8月27日の女優Z殺害予告事件、および同日皇族の子弟を標的とした私立幼稚園襲撃予告事件。福岡男性を7月1日脅迫、威力業務妨害で逮捕。自供。

④ 9月10日の伊勢神宮爆破予告事件。津市男性を9月14日威力業務妨害で逮捕。

ところが、10月9日、上掲のように「私が真犯人です」と犯人がメールで名乗り出た。この犯行声明により公表されていない事件も含めて8つの事件は同一犯による犯行であるとして、警視庁、大阪府警、神奈川県警、三重県警の合同捜査本部が設置される。

犯人はその後も警察やメディアへの挑発を続け、2013年1月「江の島にいる猫の首に記憶媒体を取り付けた」と告げ、メールに添付された写真など多くのヒントを残した。そして2013年2月10日、警察は江東区に住むコンピュータ・プログラマー片山祐輔を逮捕する。

だがここからさらなる展開をみせる。被告片山とその弁護団が録音・録画なしの取り調べには応じないという方針を最後まで貫き、逮捕後、3日間の形式的な取り調べ以外は一切の取り調べが行われないまま、公判に突入していく。

この最強の弁護団がユニーク。弁護団は公判前整理手続の期間中から公判に入っても会見を開き、その日の概略を説明した上で、自分たちの主張を発表した。他方、検察側は情報をリークし、メディアを巻き込んだ“場外乱闘”となった。

被告片山は13か月拘留されたのち保釈される。カメラのフラッシュを浴び「自由はまぶしいものだ」と語った。記者から真犯人をどう思うかと訊かれ、「この文面を見る限り、相当サイコパスみたいな人なんじゃないか。人の権利とか、どうも思っていないようなひどいやつだと思う」と語る。

5月16日の第8回の公判の最中に、裁判の流れを決定的に変える重大な事件が発生。すなわち“真犯人”を名乗る人物からのメールが、弁護士やメディア関係者に届いたのだ。……ここまでで本書の約半分。

本書は、500ページを越える大冊で、PCや司法制度の説明をわかりやすく説明し、さらにこの事件がどのような課題を投げかけているかを丁寧に検証した「PC遠隔操作事件」“完全版”である。

「主文、被告人を懲役8年に処する。
2015年2月4日午前10時過ぎ、東京地裁818号法廷に裁判長の声が響いた。これをもって、航空会社や自治体などに相次いで爆破予告や殺害予告が送りつけられたことに端を発する「パソコン遠隔操作事件」は、2年半の紆余曲折の末、一応の決着を見たことになる。
しかし、この事件は本当に決着したのだろうか。
(本書「あとがき」)

 当方が気になるのは……。

 ネット上でやり取りはIPアドレスが記録され、通信者は特定されると思っていたが、遠隔操作のウイルスやTorという匿名通信システムがあることを知った。現に上掲の逮捕された4人は、あろうことか自らのパソコンに事件予告メールが存在し、犯人とされた。

 そしてこの事件の恐ろしさは、4人の誤認逮捕のうち2人が“自白”していたという推定有罪を前提とする警察の取り調べである。

 ――犯人が犯行の唯一の物的証拠と言ってもいいパソコンを廃棄してしまったり、パソコン上のデータを完全に消去してしまった場合、犯行の裏付けとなる「決定的な証拠」などというものが果たして存在し得るのかという疑問は、今後のサイバー犯罪への対応を考える上では重要な論点になってくる。(本書)

 また、「自己顕示欲があるから捕らえれれる」という。単に事件を起こすだけでなく、つぎつぎエスカレートしていき、「自分を止められなくなる」心理がある。動機を解明する著者は、神戸連続児童殺傷事件の酒鬼薔薇聖斗や秋葉原連続殺傷事件の加藤智大死刑囚も、この事件の犯人も同じ1982年生まれだったと指摘する。
「どんな事件にも必ず、その原因の一端を担う社会的背景がある」として、著者はその遠因を探る。さらに……。

 ――弁護士らが、検察からの懲戒請求の威嚇にも怯むことなく公判の進捗状況を広く世に公開したために、われわれの多くが推定有罪捜査と推定有罪報道の実態を目の当たりにすることになった。その意味では、実はこの事件は非常に希少価値の高い重要な事件だったのだ。(あとがき)

  著者の関心は、事件の動機の解明や司法制度の問題点を真摯に洗い出すことが狙いだったようだ。当方は事件そのもののスリリングな展開だけで終わってもノンフィクションとして十分だと考える。しかし刑事訴訟法や個人情報保護法によって、調査報道が阻まれている。著者は書く。。

 ――筆者のような報道を生業とする者が、裁判の終了後に捜査や裁判の問題点を洗い出し、そこからさまざまな問題点や教訓を引き出すためには、裁判記録の情報公開が必須である。日本の司法が抱える諸問題が一向に解決されない理由の一つに、情報公開の欠如があることは明らかだ。それも今回の事件が残した課題のリストにぜひ加えてほしいと願うところである。(あとがき)


 
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