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2017. 09. 15  
2017.09.15スーパー望遠鏡アルマの創造者たち


 アルマの目的は、大きくわけると3つある。
 1990年代にアルマの取材を開始して以来、何度となく聞いてきたその3つの狙いとは……。

(1)銀河系の誕生を探る
(2)惑星系の誕生を探る
(3)宇宙物質の進化を探る

 なかでも「惑星系の誕生を探る」のは、太陽系、そして地球がどのようにしてつくられたのかを知ることを意味している。

 宇宙のどこかで、太陽系と同じような惑星系が誕生しつつある姿を観測できれば、およそ50億年前の私たちの太陽系、地球がどうつくられたのかを知る手がかりが得られる。

 それは、私が、私が暮らす地球がどのようにして誕生したのかを、タイムマシンに乗ってまじまじと見ることにも通じる。


 とはいえ、そんなことは「多くの天文学者が抱いてきた夢」にすぎなかった。
 それが実現したというのだ。


★スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち――標高5000mで動き出した史上最高の“眼" |山根一眞 |日経BPコンサルティング|2017年7月|ISBN: 9784864430425 |○

 アルマ望遠鏡は、南米チリの標高5,000mのアタカマ砂漠の高原に設置された巨大電波望遠鏡。正式名称はアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計。

 この電波望遠鏡は、光ファイバーで相互に結ばれた66台のパラボラアンテナが一体となって、天体から数億年、数十億年かけて地球に届いている「電波」をとらえようというもの。

 ――電波も光も1秒間に30万キロメートルの速度で進むので、たとえば私たちが見ている太陽は、およそ8分前という「過去」の太陽の姿だ。それと同じで、アルマが受信するビッグバン直後の電波とは138億年前という過去に発したものなのだ。その電波を詳しく調べれば、宇宙の誕生時、ビッグバン直後の様子だって知ることができるかもしれない……。(本書)

 というのがアルマの目的なのだが、その“眼”は「東京から大阪にある1円玉がくっきりと識別できるほどの視力」なのだそうだ。

 ところで本書では、偉業をなしとげた天文学者たちだけでなく、アンテナ製造にたずさわった技術者たちも追う。たとえば、「主鏡面パネルは、800×800×50ミリのアルミ板をNC機械で数ミリ厚の表面とリブ構造に切削加工し、軽量でしかも5ミクロンという超高精度を達成することができた」と当方にはさっぱり理解できない技術について、当方にとって未知の人だが、当方の町の住民で、高校の後輩にあたるエンジニアが紹介されている。まことに喜ばしい。

 この国際共同プロジェクトには、日本・アメリカ・ヨーロッパの22か参加している。そして、……。

 ――アンテナや受信機、相関器などの開発製造は日本のみならず米国も欧州も渾身の技術を投入した。日米欧は、大きなライバル意識をもちながら切磋琢磨を続けた。〔…〕仔細に取り決めた仕様にもとづいて、それぞれが独自の開発製造をしたのだ。(あとがき)

 実際には、日本は、パラボラアンテナは66台のうちの16台、電波をとらえる受信機は10種類のうち3種類を開発した、という。つまり他国も日本と同様の開発製造技術をもっていたということらしい。

 だが本書は、「日本のものづくりの底力」として、また「日本が自信を取り戻す」熱いドラマとして喧伝されている。それはそれで結構だが、おそらく文系の編集者による惹句だろう。

 ところで、理工系には門外漢の当方にも興味ある挿話が記述されていた。

 ――アンデス地方では、天の川銀河の「暗い部分」のかたちを星座としてきたのだという。あまりにも明るい星の数が多く見えるため、明るい星のみを結んで星座をつくることができなかったのだ。

 まばゆいばかりの天の川という背景に暗いシルエットをつくっているのは、羊飼い、リャマ、リャマの子、キッネ、ヤマウズラ、ヒキガエル、ヘビなどの姿だ。彼らに欠かせない家畜であるリャマ、体表からの分泌液に幻覚作用があり神聖な存在とされるヒキガエルなど、それら影絵のような星座はアンデスの人々にとって天と地をつなぐ霊的な存在でもある。
(本書)

 チチャやピスコという酒をのみながら、「何だ、これは!」と絶句してしまう星空を眺めるために、そして66台の銀色に輝くパラボラアンテナの壮大な姿を見るために、標高5000メートルのアタカマ砂漠を訪ねたい。20年若ければの話ですが…。

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