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2017. 10. 02  
20171002舞台をまわす、舞台がまわる


  関西の悩みは、いつまで経っても一つにまとまらないことです。笑い話はいくらもあります。誰かが「近畿は一つ」という。すると「近畿は一つ一つ」という人が出てくる。本当にそうなんです。〔…〕

 市民感情から見れば、どうでしょうか。大阪人は京都も神戸も好きで、遊びにも行く。

 でも京都人は大阪にまったく関心がない。遊びに行く気はさらさらない。神戸に対してはちょっと違う。神戸はハイカラです。あまりにも違うから、多少の関心を持つ。

 神戸の人はどうかというと、京都にはいささかの憧れがある。何しろ古いし、自分のところにはないものがありますから。

 しかし大阪には通勤するだけ。みんな急いで帰っていく。



★舞台をまわす、舞台がまわる――山崎正和オーラルヒストリー |山崎 正和/編集:御厨貴・阿川尚之・苅部直・牧原出|中央公論新社|2017年3月|ISBN:9784120048838 |〇

 山崎正和。1934年生れの劇作家、評論家。当方、劇作家として、また官邸の知恵袋としての山崎は知らない。が、1970年代に丸谷才一、司馬遼太郎との対談集や「おんりい・いえすたでい'60s」の読者として親しんだ。

 現代を代表する知識人としての多彩な活動の中で、当方が興味のあったのは、「関西圏に根を下ろす」「サントリー文化財団設立の頃」といった章の1970年代の“関西の復権”に関してのみ。上掲のように“三都物語”がおもしろい。

 飛鳥・奈良の時代から日本史上、京都・大阪をつなぐ路線をつくった支配者は一人もいないという。淀川という水路があるじゃないかと思ったが、ほとんど利用されなかったらしい。豊臣秀吉が唯一、淀城や伏見城によってつなごうとしたが、秀吉没後はさびれてしまう。

 京都・大阪間が結ばれたのは、明治になって国鉄、京阪電鉄、阪急電鉄の開通によってだという。それはそうだが、では飛鳥・奈良以降、鉄道以外に京都・大阪をつなぐどんな方法があったのだろう。

 以下、山崎による“三都物語”。

 ――古代都市を奈良とすると、中世都市が京都、近世都市が大坂、そして近代都市が神戸でしょう。性格がまったく異なります。それぞれ頑張っている。

 ――実は明治時代に、政府が第三高等学校を大阪につくるというアイディアを出しました。大阪はそれを断りました。「商人の子に学問は要らん」。それで三高は京都につくられた。

 ――唯一、京都が誘致した近代産業は京都大学です。これは誇張でも何でもありません。大変な投資です。京都大学と同志社・立命館という二大私学が京都に集中したおかげで、京都は生き延びた。そうでなかったら、いま頃、あそこは奈良のように鹿が遊んでいるでしょう。
(本書)

 たしか万博は1970年だったが、山崎はこれに関与せず、73年ころから大阪商工会議所主催の関西復興会議にかかわり始め、74年のサントリー文化財団設立に関与する。

  ――一番情けないのは政治です。〔…〕自治体は惨憺たるもので、ろくな知事がいない。ときどき市長にいい人も出てくるんだけれど、官僚機構が大きくて労働組合が強い。ということで結局、民間と学界が車の両輪になって大阪復興の運動を起こしました。 (本書)

 梅棹忠夫、小松左京、黒川紀章(国立文楽劇場設計)、司馬遼太郎、開高健など、“綺羅星のごとく人を集めた大会議”を準備する。これが伏線となり、佐治敬三によってサントリー文化財団がつくられる。

 ところでこのオーラルヒストリーは、2006年3月から2007年12月までの間に1年半、1回2時間程、合計12回行われたもの。したがって現在の大阪の地方政治の情況が語られていない。

 橋下徹が大阪府知事に2008年2月就任、2011年12月には自らが掲げる大阪都構想を実現するとして大阪市長に転身。府立国際児童文学館の廃止、大阪文化の象徴である文楽へのいじめ、大々的に校長を公募し、その不祥事多発など、大阪の文化、教育を破壊した。

 1994年開設のサントリーミュージアム[天保山]は2010年に廃止。また大阪市立新美術館は構想から30年、まだ設置に至っていない。

 他方、この“コスモポリタン都市”へ中国、韓国など外国人旅行客は急増し、また大阪駅周辺一極集中のまちづくりも進み、大阪万博、カジノ誘致も図っている。松井大阪府知事は国政政党の代表も務め、地方政治は一変し、“活気ある暴走”が続いている。
  山崎がどのような眼で現在の大阪をみているか知りたいところである。

京都はつねに“全国的視線”のなかで矜持を保っている。当方の好きな神戸は震災復興を成し遂げたが最近のまちづくりの発想は貧困の極みである。




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