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2017. 10. 09  
20171009社長室の冬・紙の城


 もちろんアーカイブ、データベースとしては残るにしても、デジタルの文章には「質感」がない。単なるデータの羅列だ。

刷り上がったばかりの新聞のインクの香りと紙の温もりは、「仕事をした」という充実感を与えてくれる


ーー自分は古いタイプの記者なのだろうか、と南は訝った。

★社長室の冬 |堂場瞬一


一番大事なのは紙とかネットというフォーマットの問題ではないと思っています。

これだけネットで情報が氾濫しても、一次情報を発信しているのは現場に出ている記者です。その記者を未来に存続させるためにも、新聞社はどんな形であれ生き残っていかないといけない、

今はそう思っています。

★紙の城|本城雅人


★社長室の冬 |堂場瞬一 |集英社 | 2016年12月|ISBN:9784087754339 |〇★紙の城 |本城雅人 |講談社|2016年10月|ISBN:9784062203302|〇

 IT企業による新聞社買収騒動を描いた2作である。

 堂場瞬一『社長室の冬』は、日本新報(300万部)の社長室の記者・南康祐が主人公。外資系IT企業との売却交渉を社長のもとで務める。同期は見切りをつけてやめていく。交渉相手は、AMCジャパン社長青井聡太。かつて日本新報にいた男。メディア・コングロマットAMCのアリッサ・デリードCEO。同社から派遣されたマネージャー高島亜都子。買収に反対するは、個人筆頭株主・長澤英昭、党政調会長・三池高志。

 本城雅人『紙の城』は、東洋新聞(200万部)の社会部デスク・安芸稔彦が主人公。パソコン音痴で、飲み会の店も足で探す昔ながらの新聞記者。後輩の尾崎毅、霧嶋ひかりを従え買収阻止に動く。交渉相手はIT企業インアクティヴの戦略室長・権藤正隆。かつて東洋新聞記者だった男。ライブドアとフジテレビ・ニッポン放送との買収事件をヒントにしたような部分もあり、アーバンテレビの吉良会長、IT企業インアクティヴの轟木太一、そして黒幕にITカリスマ経営者ニューマーケットインク会長・米津訓臣。

 この2作には、共通点が多い。①大手新聞社対IT企業の買収交渉。②主人公は新聞記者。③その新聞社の元記者がIT企業に。④結末が同じ。⑤しかも作者は元新聞記者。

堂場瞬一・1963年生まれ・2001年デビュー・元読売新聞記者
本城雅人・1965年生まれ・2009年デビュー・元産経新聞サンケイスポーツ記者

 ――「誤報を書けば、すぐにネットで叩かれる。内容を検証しょうという人間も出てくるだろう。私が記者をやっていた頃は、そういうことはなかった。せいぜい社内で問題になるぐらいで、訂正記事なりお詫びなりを書いて終わりだった。その程度で済んでいたのは、今と違って、新聞を批判するメディアがなかったからだろうな。雑誌はよく新聞の悪口を書いていたけど、そんなものはコップの中の嵐だ。とにかく、ネットの出現がメディアの構造を変えた……私は、こんな風になる前の時代が懐かしいよ」(社長室の冬)

 ――「私にとっての新聞は、読者にとって興味がなかったものも、知らず知らずのうちに目に入って、読んでもらうことができる知識を広めるための道具です。
 ネットはそうではありません。記事も広告も、自分が好きなものだけを機械が選び、勝手に画面に出てくるわけですから」
(紙の城)

 さて、買収は成立せず新聞社は大きなダメージと改革の嵐が待っているという“予定調和”的結末。買収成立では、その後がリアルに予測を描くことが困難ゆえか、課題を羅列して終わらざるを得ない。

 テレビで記者会見の映像が流れると、若い記者がICレコーダーを置き、モバイル・パソコンをパチパチ打っている。またウェブ版があるため24時間記事を送らねばならず、かつてのように朝刊・夕刊の締め切りに間に合わせればいい時代ではなくなった。新聞にウェブ版がある以上、新聞本体も変わらざるを得ない。

 新聞記者が主人公の小説も間もなく書かれなくなるだろう。


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