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2017. 11. 29  
20171129誰がアパレルを殺すのか


 翻って、日本の百貨店が“服を売らない”企業に売り場を提供するかといえば、こうした取り組みはほとんどない。モノにしてもコトにしても、いまだに「売る」ことを前提として売り場を作っている。

 これまで洋服は、「新品を」「売り場で」「買う」のが当たり前とされてきた。アパレル業界内の各社は皆、この価値観を疑うことなく商売を続けてきた。

 だがアパレル業界の「外」から参入した新興プレーヤーはこの前提を疑った。


 〔…〕消費者はもう洋服を買うためにわざわざ売り場まで足を運びたいとは思っていない。いつも新品ばかりを買いたいわけでもない。洋服を買うだけでなく、中古品を売買することにも興味を持つ。

 この変化に目を向けず、今まで通り新品を大量に売り場に並べるだけではもう見向きはされない。


★誰がアパレルを殺すのか |杉原淳一・染原睦美|日経BP社|2017年5月|ISBN:9784822236915 |○

 1970・80年代のファッション=アパレル業界は……。川久保玲、山本耀司などデザイナーがパリ・コレを席巻し“芸術家”として扱われた。メーカーのワールドは、社員たちが人工島の本社まで毎朝タクシーで通勤した。アパレル販売員は憧れの仕事で渋谷109ではカリスマ店員ともてはやされた。

 そして今……。
 オンワード、ワールド、TSI、三陽という大手アパレル4社の売上は減少の一途をたどっている。アメリカではアマゾンのファッション部門の売上高が、米百貨店最大手のメーシーズの売上高を追い抜くとみられている。いやわが国でも、ネット通販のZOZOTOWNは年間流通金額は2000億円を超え、三越伊勢丹、高島屋も真っ青である。

 アパレル販売員は、土日出勤、夜遅くまで立ちっぱなし、正社員にせず、とブラック企業のイメージがある。
 ――みんな、洋服が好きでこの業界に入ってくるんですけど、何年か仕事をしているうちに気付いちゃうんです。この待遇なら、条件のいいほかの仕事をして、稼いだお金で好きなブランドの服を買ったほうがかしこいんじゃないかって。(本書)

 本書は日経ビジネスの若き書き手杉原淳一・染原睦美によって、生地や糸の生産をする「川上」から、商品を企画するアパレル企業などの「川中」 、百貨店やショッピングセンターなどの「川下」まで、アパレル産業を取材をしたもの。

 そしてその結論は……。

 ――そのすべてを取材して見えてきたのが、業界全体に蔓延する「思考停止」だった。多くの関係者が、過去の成功体験から抜け切れずに目先の利益にとらわれ、年々先細りして競争力を失っていた。(本書)

 川上・川中・川下といえば佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』(2001)を想起する。書店・流通・版元・地方出版・編集者・図書館・書評・電子出版の関係者を取材し、“本が悲鳴を上げている”と訴えたノンフィクションがベストセラーとして注目を浴び、続編まで出た。が、その後出版業界は凋落を止められず、“だれも「本」を買わなくなった”と断末魔のごとき様相である。

 さて、アパレル業界の「外」から参入する新興勢力はITを武器にする。「新品を買う」ものであるという価値観を軽々飛び越えて、「新品を売る」→「中古になったら買い戻す」、また、「新品を貸す」→「貸したものを中古品として売る」という時代である。業界の「中」からも、古い慣習を破ろうとしている。
 そしてアパレル産業は次の成長につながるチャンスがある、と本書は結論づける。

 だが当方は、スマホ・フリマ「メルカリ」の興隆といった社会事象ではなく、人口減少社会の動向にファッション=アパレル産業は大きく左右され、再現はあり得ないと思っているが……。さて、いかに生きるか。


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