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谷川俊太郎・尾崎真理子★詩人なんて呼ばれて …………☆あすはちかくてとおい いきるだけさ しぬまでは

20171211

20171211詩人なんて呼ばれて


 年を取るとモノも要らないし、人づきあいも増やしたくないし、大げさに言えば、悟りをひらきたいみたいな。そういう心のありようが大事になってくる。

 自分が世界を見たり人間を見たりするときの意識の方が、現実の社会、世界よりずっとリアルになってきて、その意識がたしかに持てれば、自分は安心して死んでゆける……そんな方向に行くんです。でも、そんなことを詩に書いたりはしません。

 詩の方はね、ただ読んで、楽しくなってほしい。自分でも書いていて楽しいものを書いていたい。

 ある種の軽み? そうかもしれないけど、もはや詩じゃなくても構わないんじゃないの、くらいの気持ち。


 でも、僕の場合は、若い時より今のほうが詩がよく読めるし、よく書くことができるようになったと思う。


谷川俊太郎・尾崎真理子★詩人なんて呼ばれて |新潮社|2017年10月|ISBN: 9784104018062|◎

谷川俊太郎(1931~)は、ただ一人“詩人という職業”で食っている詩人である。

 いま手元に『谷川俊太郎詩集』(1965・思潮社)がある。800ページ近い大冊で、第1詩集『20億光年の孤独』(1952)以降の7冊の詩集が収められている。33歳での最初の“全集”である。
本書で谷川は、60~70年代は「けっこう詩がふつうの人の近くまで行った時代」だと語っている。当方が、この詩集を持っているのはそれ故である。

 当時、谷川俊太郎は『櫂』の同人。茨木のり子、川崎洋、吉野弘、大岡信、岸田衿子らがいた。当方は、その一世代上の『荒地』の鮎川信夫、田村隆一、黒田三郎、北村太郎、中桐雅夫、加島祥造らの方に魅かれていた。『荒地』には戦争の影があり、『櫂』にはそれがなかった。
 そのほか寺山修司や清岡卓行、岩田宏に興味があった。

 谷川俊太郎。1931年生まれ。第1詩集『二十億光年の孤独』は、1952年、20歳のとき。
 寺山修司。1935年生まれ。第1作品集(詩・短歌・俳句)『われに五月を』は、1957年、21歳のとき。
 ともに早熟である。当方、どちらかといえば寺山に魅かれていた。

 谷川は、同時代の詩人からの評価は軽すぎ、詩壇では「大衆的」と片づけられることも多かった、と著者は書く。しかし当方は、かるがると言葉を編む“天才”と思い、ただただ畏敬の念をもっていた。

 他方、寺山は、『書を捨てよ、町へ出よう』から少女向けの『ひとりぼっちのあなたに』、競馬本まで、エッセイ中心に読んだ。だが、寺山の“盗作”問題がつねに引っかかっていた。
 たとえば、「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」は、寺山の代表作とされるが、この短歌には、その前に富沢赤黄男(かきお)の俳句、「一本のマッチをすれば湖は霧」「めつむれば祖国は蒼き海の上」があった。寺山に短歌、俳句は、模倣、剽窃、盗作であると非難された。ところが今回、谷川の以下の発言を知り驚いた。

 ――最初、寺山が短歌を発表した時、盗作だと言われたりしましたね。でも、彼からすれば自然なことで、僕はあの時、彼自身が主張すれば良かったと思うね。
 自分の言葉というのは、何も自分から出てこなくてもいい、もっと言語の大きな時代状況の中で、自分が選び取った言葉でいいんだ、って。
(本書)

 さて、谷川は、2,500篇を超える詩を発表し、現在86歳である。離婚した岸田衿子(詩人)、大久保知子(新劇女優)、佐野洋子(絵本作家)という3人の妻は相次いで死去し、詩人はいまどのような生活をしているのか。

  ――気持ちが動けば夏はTシャツ一枚、冬はセーターにダウンをはおって、遠方の小さな朗読会にも、老人福祉施設へも幼稚園へも一人で出かけていく。時には自分で車を運転して。もちろん、日々の基盤にあるのは詩の創作で、「最近、詩を書くのかたのしくなった」と、薄いM a cを日に何度も開いて推敲を重ねている。(本書)

 上掲にあるように、詩は青春のものではなく、むしろ老年のものだ、と語っている。しかし当方は、寺山修司の代表句は
   便所より青空見えて啄木忌
という1953年「蛍雪時代」掲載の投稿作品だと思っているし、谷川俊太郎の代表詩は、やはり10代の作である「二十億光年の孤独」をあげる。

人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがつたりする

火星人は小さな球の上で
何をしてるか僕は知らない
(或はネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがつたりする
  (以下略)

 それにしても著者尾崎真理子の凄腕には驚く。本書は谷川俊太郎のインタビューと評伝をあわせたもつオーラルヒストリーの傑作である。『ひみつの王国――評伝石井桃子』(2015)でもその調査力に驚いた。はやく記者生活を退き、執筆活動に専念し、読者を楽しませていただきたいものだ。

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