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畠山 理仁■黙殺――報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い…………☆全裸や候補者名のないポスター、放送禁止用語連発の政見放送の真意は……。

20180115

2018.01.15黙殺


 実際、後藤は20歳の頃から政治家を目指し、政治について考えてきたという。
 それなのに後藤は政見放送であえて政策を言わず、「放送禁止用語だらけの政見放送」にした。なぜなのか。
 後藤は私の問いかけに姿勢を正し、まっすぐこちらを見て答えた。

「『政治に関心を持たないのはなぜなんだ!』という怒りがある。もともと自分が立候補したのは、

『なんだこいつは』『なんでこんなやつが立候補しているんだ』と驚きを与えることで、みなさんに政治に関心を持ってほしいと思ったからです」
〔…〕

 しかし、都知事選の供託金は300万円だ。そんな大金を失うリスクを冒してまでやるべきことなのだろうか。

――第3章 東京都知事候補21人組手


■黙殺――報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い |畠山 理仁|2017年11月|集英社|ISBN: 9784087816518|○

 本書の帯に「落選また落選! 供託金没収! それでもくじけずに再挑戦!」とあるが、新聞・テレビなどのマスメディアからは「黙殺」されがちな立候補者たちを追ったもの。

 たとえば、2016年の東京都知事選には、小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎の“主要3候補”をはじめ21名が立候補した。

 ――この都知事選中に民放テレビ4社の看板ニュース番組が「主要3候補」と「それ以外の18候補」に割いた時間の比率は「97%対3%」だった。〔…〕公職選挙法に抵触しないよう、「主要3候補」の報道が終わった後に全候補者に触れている。たとえばテレビであれば、「今回の都知事選には、ご覧の18人も立候補しています」と申し訳程度に名前と年齢をまとめて表示し、数秒間だけ映す。 (本書)

 “泡沫候補”のなかでもっとも著名なのがマック赤坂(1948~)という人。著者に問われて、マック赤坂はいう。

 ――「私が壊したいのは、体制、常識、コメントばかりして行動できない人。〔…〕NHKは日本の保守的な部分、とんでもなく常識的な部分だ。しかも、NHKに出れば日本人はコロッと信用する。おれはNHKという権威に対する過度な信頼感も壊したい。何も考えずに信用してしまう日本人の無意識を壊したい。それを一旦壊したら、瓦礫の中から何かが生まれる。そこなんですよ、私の原点は」 (本書)

 当方がとりわけ興味を持った“泡沫”は、上掲の後藤輝樹(33歳=7,031票で21名中13位)という人である。

 後藤の都知事選でのポスターには、軍服姿の本人の写真はあるが、「候補者の名前」が書かれていない。また、それ以前の千代田区議選では「全裸ポスター」を使用したという。

 その後藤の「選挙公報」に掲載した公約は、以下のようなもの。

 ――「江戸城天守閣を再建」「築地市場移転を中止、見直し」「東京五輪中止または超低コストでや
ります」「横田基地を返還させ、横田空域を解放し、首都圏の空の主権を回復します」「排気ガス税導入」「超高層ビル群を建設」「日本の漫画アニメ特撮等の純国産テーマパーク」「無修正ポルノを合法化します」「パチンコ店を減らします」「独身税、肥満税、海外旅行税を一律10万円にします」「東京都心の最低時給を1200円以上にします」「1度だけ歯列矯正を無料にします」……
(本書)

 ユニークなものもあるが、東京をこうしたいという、しっかりとした政策である。だが、全裸や候補者名のないポスター、6分間放送禁止用語を連発する政見放送をしなければならないと、後藤が思うほど、若者たちは政治に無関心なのだ。

 本書ではこうした“泡沫=無頼系”候補に密着している。
 かつて朝日新聞は候補者を「一般候補」「準一般候補」「特殊候補」の3つに分け、報道に格差をつけるようにしていたという。
 準一般候補:当選の可能性は別にして、まじめなミニ政党などの候補者。
 特殊候補:選挙を売名や営利などに利用したり、自己のマニア的欲求を満足させるために数々の選挙に立候補、云々。

 当方は“泡沫候補”はただただ目立ちたいだけと思っていた。だがよく考えると、当方も“泡沫”ではないが、選挙地事情を見れば落選するだろうなと思いつつ“反安倍”であるが故に野党の候補に一票を投じることがある。当方からすれば“泡沫候補”も“野党候補”も“落選覚悟”に見える。

 そして“泡沫=無頼系”候補にとって最大の難関である供託金の確保に奔走する姿を知り、これは目立ちたいだけではないと思うに至った。

 衆・参の選挙区、300万円、比例で600万円。知事選も300万円の供託金が必要なのだ。衆院25歳以上、参院、知事30歳以上で、「誰でも出られる」といっても、経済的ハードルが厳しい。ちなみに供託金は、イギリスが7万5000円、カナダ、オーストラリアが9万円、韓国でも150万円程度だそうだ。フランス、ドイツ、イタリア、アメリカなどは供託金制度そのものがない。

 著者は20年にわたる選挙取材から本書を執筆し、“泡沫=無頼系”蔑視に異を唱え、メディアの扱いに疑問を呈し、供託金など選挙制度の改善を提唱する。



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