真山仁◆標的……☆小説では東京地検は次期総理を逮捕、現実の“アッキード事件”では大阪地検は霞が関や首相官邸の指示通り?

20180312

2018.03.12標的


「恐縮ですが、ご同行願えますか」
「被疑事実を伺えますか」
 萩原が尋ねた。
「受託収賄容疑です」〔…〕

「冨永検事、同行を拒否したらどうされますか」

「その場合は、私の上着の内ポケットにある文書を提示して、越村代議士にとって不名誉なことをしなければならなくなります」


「逮捕状が出ているという意味ですか」
萩原は曖昧な言葉が嫌いなようだ。
「そうです」

「あなた、誰を逮捕しようとしているのかを自覚しているんでしょうね」
刺すような視線をぶつけてくる越村に向かって、冨永は領いた。
「越村みやびさんに対してであると承知しております」


◆標的 |真山仁 |2017年6月|文藝春秋| ISBN:9784163906676|△

 惹句から引用すれば、……。48歳という若さの越村みやび厚労大臣が日本初の女性総理としてにわかに現実味を帯びはじめる。そんな中、医療・福祉系投資会社の元CEOが、収賄の疑いでみやびを告発したいと東京地検特捜部に接触する。『売国』につづく冨永検事シリーズ第2弾。

 政界、検察、マスコミという3つのグループが交互に登場、交錯し、ストーリーが展開する。

 厚労大臣・越村みやび、その夫・雪の鶴酒造当主越村俊策、厚労大臣諮問機関の事務局長の投資会社代表・楽田恭平など、“越村グループ”。暁光新聞記者・神林裕太、大塚有紀、上司の東條謙介部長など、“暁光新聞”グループ。そして東京地検特捜部検事・冨永真一、藤山あゆみ、羽瀬喜一副部長。岩下希美部長など、“東京地検特捜部グループ”。

 物語は、サ高住こと、サービス付き高齢者向け住宅の新法制定をめぐって展開する。読者である当方がいちばんスカッとするのは、上掲のように地検特捜部が次期首相を逮捕するところである。

 著者真山仁はインタビューでこう語っている。

 ――「権力イコール悪とか、検察は本当に悪い政治家は逮捕できないとか、言うのは簡単。でもその嫌悪感に根拠はなかったりする。検察にエールを送っているわけではないんですよ。検事という人間が組織の中で何に縛られて、何をモチベーションに動いているのか。小説を楽しみながら、いろんなことに興味を持ってもらって、理解してもらいたい。それはずっと私のテーマなので」(2017.3.6 産経新聞)

  『標的』では、拘留中の越村みやびと富永検事とのこんな会話もある。

 ――「国民感情というのは、怖いものですね。総理が漏らした呟きが、多くの国民の怒りに火を点けた。そして不思議なことに、総理自身にまで火の手が回ってしまった。みるみるうちに支持率が下がった上に、総理を辞めよという声が日増しに高まっています」
「それだけ国民の目がしっかりしているということではないのかしら?」
「ですが、越村先生への非難もやまない」(
本書)

 さてさて、現実の森友学園問題では、近畿財務局職員の自殺、佐川宣寿国税庁長官の引責辞職、そして本日、財務省は決裁文書の書き換えを認め、国会に報告するところまできた。

 現時点で当方が思うのは、山本太郎議員が参院予算委で発言した“アッキード事件”ということばが正鵠を射ていることだ。
 学校法人森友学園の籠池泰典・諄子という“特異な教育をする”理事長夫婦に共鳴した安倍昭恵首相夫人が名誉校長に就任したことからすべてが始まった。大阪府私学課、近畿財務局、大阪航空局がそれぞれ設置認可、土地評価、売却価格に“忖度”を働かせたことに尽きる。

 そして安倍晋三首相の「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という国会での発言が“命取り”ぬならぬよう首相官邸、財務省は、嘘に嘘を重ねた。

 それにしても大阪地検特捜部は何をしているのか。
 籠池夫婦を8か月近く拘留したままで、大阪府、近畿財務局、大阪航空局への捜査は放置したままである。
 2010年の自らの証拠改ざん事件のトラウマが癒えぬのか、あるいは霞が関の顔色を窺う幹部しかいなくなったのか。
 本日(2018.03.12)押収した決裁文書を財務省に返し、それが公表される。まさか、官邸に都合のいいように大阪地検が改ざんしたものではないでしょうね。そして佐川逮捕で終わらせるつもりではないでしょうね。

 ちなみに『標的』の東京地検特捜部長は女性であり、現実の大阪地検特捜部長も“初の女性部長”である。



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