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2018. 04. 16  
2018.04.16おひとりさまvsひとりの哲学


  死後の世界をそれほど信じていない自分にとって、究極的に骨はどういう意味かっていうことを改めて問いかけていくと、結局それはゴミだなと思った。生ゴミだなと。〔…〕

 魂でもない、あの世でもない、何かがどこかに行くなと。そのときに例の、「土に還る」「自然に還る」という言葉がふっと自然に浮かびました。

 自然に還るということは、いったんは白骨になるんだけれども、それがやがて粉末になり分解されて土に還る。

 土のなかで新しい生命、つまり植物、樹木、草、花、そういうものになっていく。


 変化して。その栄養分になって、新しい生命のもとになっていく。そういう意味での輪廻、転生。そういうところにふっと気がついて、〔…〕。それで気持ちが非常に落ち着いたんです。(山折哲雄) 


◆おひとりさまvs.ひとりの哲学 |山折哲雄・上野千鶴子|2018年1月|朝日新聞出版|ISBN:9784022737519|△

 宗教学者・山折哲雄(1931~)と社会学者・上野千鶴子(1948~)の“死に方”をめぐる対談である。

 上野は「まえがき」で1990年前後に日文研で顔を合わせていた頃の山折のことを「ただ気さくというだけではない、場を超越した侵しがたい気品があって」と畏敬をこめて書いているが、それ以外は山折を「ニセおひとりさま」と呼び、無遠慮な発言を繰り返す。

 職場でまことに優秀な“独身女性”社員を多く見てきたが、その“きゃんきゃん”と騒がしく論理で追い詰めるのに、当方は辟易したものだ。上野はもう60代のはずなに相変わらず“きゃんきゃん”と無遠慮に騒がしい。山折も「あとがき」で「ときには脅かされ、それで動悸パクパク、といった場面が」と書いている。
 
 途中で投げ出そうかと思ったが、山折の「上野さんは、なんと人間に対する考え方が柔軟で、そして優しいかと思いますよ」との発言から、やや上野の風向きが変わり、なんとか最後まで読み通せた。

 本書は『おひとりさまの老後』(2007)の上野と、『「ひとり」の哲学』(2016)の山折とによる老いや死や看取りについての対談である。上野はリアリティから語り、山折はスピリチュアリティから語る。

 大きなテーマは「人は宗教の支えなしに死んでいけるか」である。“知の巨人”である加藤周一や中井久夫が晩年にカトリックに入信した。上野はその中井に「信仰ってなんですか?」と訊ね「便利なもん、だね」との意外な答えを得る。そしてプロテスタントのクリスチャンだった父を語る。

 ――母が亡くなった後、納骨とかにいっさい行かないんです。墓参りもしない。なぜかっていうと、「ママはそんなとこにいない」と言うんです。それがまあ、自分の死の直前になってから「お母さんとおなじ墓に入れてくれ」と言いだし、さらに「墓参りにも来てくれ」と言いだした。やっぱりそれって、浄土真宗のDNAなんですかね? なんなんだ、あれは(笑)。 (本書)

上野 いえ。わたしは、生きてる間によりよく生きたい。それがわたしのモチベーションです。
山折 それはそれでいい。死後を信じない人に無理して死後を信じさせようとするほど無駄なことはない(笑)。
上野 もちろんそうです。いまお話ししてるのは、そういうふうに思っていた人たちでも、死の直前に変わるのはなぜだろうなということです。

 山折は上野に「血縁からは脱却できるけれども、遺伝子からもはたして脱却できるのかな」と“呪い”の言葉をかける。

 さて、当方は、上掲の山折の死生観が気に入った。これなら小さな孫にも話せる。死んだらただのゴミと思っていたが、土に還って、樹木、草、花といった新しい生命になる。そこで一句……。

  骨、土に、やがて芽吹くと思ふかな




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